村田環殺害事件の聞き込み調査

 私は、先ず第一発見者である女将の桜舞の部屋を訪ねていた。トントン

「どうぞ」

「失礼します」

「刑事さんが居てくれて良かったかもしれませんね。殺伐とした雰囲気にはなりましたが大きな問題は起きませんでした。感謝いたします」

「いえ、それで村田環さんの遺体を発見したときのことを詳しくお聞きしたいのですが構いませんか?」

「えぇ、犯人逮捕のためですから協力は惜しみません。朝起きて、仕事をするために向かっていた時。村田様のお部屋が空いていたので、木下さんが殺されるという事件も起こった後でしたので不用心だと思い。声をかけたのですが反応がなかったので、お客様のプライバシーを無視してしまう行動でしたが中に入って、真ん中の布団で血を流している村田環様を見て悲鳴を上げた感じです。その大声で起きた村田力待様と村田力持様が村田環様に駆け寄り、声をかけたり、身体を揺すったりしたのですが反応がなかったので、私が脈の確認を頼むと2人とも首を横に振り死亡を確認した形です」

 どうやら話を聞く限り本当にその場で殺人が起こったとは考えられない。だが木下散梨花さんの遺体の時と違い村田環さんの遺体の刺し傷は胸を鋭利な刃物で一突きである。怨恨の線なら何度も刺すだろう。ドッペルゲンガーを騙る何者かは怨恨とかではなく殺人を楽しんでいるシリアルキラーだということだ。それも相当の腕を持った。相手に対抗させる余裕も与えずに胸を一突きなのだから。

「当時のだいたいの状況はわかりました。女将さんのことを疑っていました。謝ります」

「えっ。いえ、こんな状況ですもの。私が疑われるのも無理ありません。どうかお気になさらず。メリーちゃんのことも今回のことも何でも協力するので、真実をどうか教えてください」

「必ず。真実を明らかにします」

 女将さんは私の言葉を聞くと安心したようで、少し休みたいとのことなので、女将さんの部屋を後にして、村田兄弟を訪ねた。トントン

「刑事さんか。入ってくれ」

「失礼します」

「まさか俺らを疑ってるわけじゃねぇよな」

「兄貴、やめろって。刑事さんすまねぇ。兄貴は義姉さんを亡くして、抑えが効かなくなっちまってる。俺も大概だが兄貴は」

「同じ部屋にいて、殺人に気付かなかったという点では当初疑っていました。ですが看護師の南野さんによる村田環さんの検死結果と女将である桜舞さんの話を聞き。ここでの殺人はありえないことが判明しています。だからお2人に話を聞きたいのは別のことです。村田環さんが何故ドッペルゲンガーを恐れていたのか。その真実を聞きたいのです」

「予告状だよ」

「力待、何言うとんじゃ」

「兄貴、義姉さんを殺した犯人を特定するためだ」

「!?わかった。ワシが話す。環がいつものように夜の仕事を終え帰ってきて部屋に入ってすぐ飛び出してきてな。ひどく怯えておったから何事か聞くと564219というメッセージが書かれた紙を恐る恐るワシに見せてな。ドッペルゲンガーとはいえ、人じゃろ。だったら環を連れて逃げ続ければ良いと思ってな。各地を転々としながらドッペルゲンガーを探しておったんじゃ。相手がわかれば対処できるじゃろ。愛する環のために何とかしてやろうと思っておったんじゃが。ままならんものだな。ワシは許さん。必ずこの手でドッペルゲンガーを殺してやる」

「刑事の前で殺害予告はいただけませんね。でも、村田環さんがドッペルゲンガーを恐れていた理由はわかりました。では、各地を転々とする中で、ドッペルゲンガーについて何かわかったことはありますか?」

「ワシが調べた限りじゃと奴は時間の融通が効く仕事をしているのは確かじゃ。殺害時間が17時から深夜にかけてなんじゃ。だからワシは学生じゃと聞いた阿久魔を疑ったんじゃ。学生なら可能な時間であろう」

「確かに可能ではありますね。ですが殺害方法に無理があるのでは?」

「胸を➖突きってやつじゃな。確かにあのガキにそんな大それたことできんじゃろうな。だが刑事さんが言ったことを間に受けるなら犯人はこの桜庵にいる中におるんじゃろ?」

「えぇ、少なくとも私はそう考えています」

 外部との連絡を遮断して桜庵を孤立化させたのはドッペルゲンガーを騙る何者かなのは間違いない。その頃からターゲットである村田環の殺害を考えていた。そのドッペルゲンガーを騙る者にも予期せぬ事が起こった。怪異メリーさんによる木下散梨花の殺害だ。だが、これはドッペルゲンガーを騙る者の自己誇示欲を刺激した。まるで競うようにそのタイミングで村田環の殺害を実行したのだ。だが、わからない。ドッペルゲンガーを騙る者は、どうやってターゲットを決めているのだろうか?

「考え込んでたみたいだが大丈夫か刑事さん」

「えぇ、ドッペルゲンガーがどうやってターゲットを決めているのかについて、わからなくて」

「これだよ」

 村田力待が見せてくれた携帯の画面には、173256386404と書かれた。裏掲示板のサイトであった。

「これは、あなたの恨み晴らしますかしら?」

「恐らくな。あの探偵にでも聞けばわかるだろうが」

「もう良いか。ワシは犯人を見つけねばならんからな。もう聞きたい事がないのであれば出て行ってくれんか」

「わかりました。犯人を見つけても殺す事は許可できません。必ず知らせてくださいね。然るべき罰を与えますので」

「約束はできんが心には留めておこう」

 部屋を追い出された私は村田力待に教えて貰った。裏サイトを開いてみた。

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