第5話

痛みが体に走って目を見開く。



自分の体がここまで弱っていたことに、初めて気がついたのだ。



「私は大丈夫よ」



こけてしまった看護師に手を借りてどうにか起き上がり、ベッドへ戻った。



自分の筋力よりも女性看護師の方が力が強いことに愕然としてしまう。



シュンヤは素直にベッドに横になり、点滴を受け入れたのだった。


☆☆☆


1時間ほどの点滴中は頭がボンヤリとして眠っているような感覚になる。



その時間帯に廊下から母親と医師の会話が聞こえてきた気がした。



「痛みを緩和するために点滴の内容を変更します」



「……わかりました」



点滴が終われば意識がハッキリとする。



しかし襲ってくるのは激しい吐き気だった。



シュンヤはベッドの上で洗面器を抱きかかえてえずく。



その背中を母親が懸命にさすってくれた。



「今度の薬、前よりも強いの?」



洗面器から顔を上げて聞くと、母親は「そうみたいね」と震える声で答えた。



その目には涙が滲んでいる。



またゴミでも入った?



そう質問したかったけれど、吐き気がこみ上げてきて言葉が出なっくなってしまった。



前回入院したときはもっと軽い薬で、こんな風に吐くこともなかった。



泣いている母親を横目で見て、シュンヤはぼんやりと自分の命はあとどれくらいなのだろうかと、考えた……。

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