グローバル化とウェブコンテンツ
グーグルアナリティクスというのがサイトで機能していた頃のことだ。
ごくまれに海外からのアクセスがあった。
それは単純にプロクシーかなにかを通したアクセスであったかもしれない。
ただ、しばらく前に「Googleの検索トレンドを調べると、なんとアフリカのナイジェリアなどで武侠小説が検索されている」(注1)という興味深い記事を読んだ。
そういえば、発展途上国と言われるような国をほっつき歩いていたとき、カンフー映画は人気だった。
もちろん海賊版である。
市場でゴザの上に乱雑にひろげられたものを人々は物色していた。
動画配信もない、レンタル店もないような地域で、人々はこのようにしてコンテンツを楽しんでいた。
ちなみに日本のアニメもかなりの人気で、こちらは主に違法配信動画で楽しまれていたようだ。
知り合いの子供が私以上に当時の人気アニメの一つに詳しかった。
「きみんちにテレビないだろ? どうすんの」
「お小遣いや学校に行くときの交通費を節約して、ネットカフェに行くんだ」
人々の生活に興味があった私は、「おごってやる」と言って、彼のいきつけの店に数度ついていったことがある。
しばしばとまったり、時には停電になったりする中、彼は必死にアニメの続きを追っていた。
先述の記事によると、現在は映像ではなく、文字コンテンツが人気らしい。
スマートフォンが少しずつ普及していること、通信料のことを考えると、文字コンテンツの人気にはさもありなんと思う。
私が読んだ記事は次のように続ける。
内容がダメ、翻訳クオリティが多少ダメなコンテンツでも、本を読まなかった
市場に向けて、なんとなくあらすじがわかれば楽しいというニーズは確かにあり
ます。人海戦術による玉石混交というか、ほとんど質が良くないコンテンツが、
大量にアフリカなど第三世界に流れ受け入れられているのは、まさに娯楽不足で
スマホが普及しつつある今だからこそという時の運もあるわけです。作中の登場
人物の細かな感情の表現まで品質にこだわるプロの翻訳家は、100円ショップの
商品が大量に流通する中での高級ブランドのように少数派の職人となっていくか
もしれません
おそらくこれは一過性のもので、そのうち人気はウェブ漫画に移っていくような気もしている。
ただ、どちらにせよ、日本で文字を書くというのは、それなりに大変になってくるのかもしれない(注2)。
注1:ここでの引用はすべて下記記事からのものである。
山谷 剛史 「“AI爆速翻訳”されたB級ケータイ小説が世界中で売れている理由とは:中国発 『AIに小説の翻訳はできない』という“常識”がくつがえった」 2021/04/28、文春オンライン。
https://bunshun.jp/articles/-/45080
注2:このエッセイは書いてからずいぶんと寝かせていた。寝かせている間にカクヨムにサブスクがきたりして、驚いている。
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