きちゃった(エロ回)

 ある日の深夜、後輩(バカ)が語りだした。

 各々の怖い体験談を肴に酒を飲むという集まりでのことだ。


 ◆◆◆


 夜、一人で映画を見ていると、インターフォンが鳴った。

 ドアフォンで応答すると返事がない。

 気のせいかと思って、テレビの前に戻ると、再びインターフォンが鳴る。

 応答するも反応はない。

 インターフォンはあっても、ドアカメラはないから、外を確かめられない。

 気味が悪くなって無視をした。

 それでも執拗に鳴らされるインターフォン。

 さすがに腹立たしさのほうが気味悪さに打ち勝った。

 彼はドアを開け放つ。

 そこにいたのはとうの昔に別れた元彼女。

 「来ちゃった」

 と彼女は微笑んだ。


 ◆◆◆


 後輩は恐ろしい話のように語るわけだ。

 当時、独り身である私はひどく腹を立てた。

 私はすっくと席を立つとサルミアッキのキャンデーを腰にかまえ、少し目を細める。

 いつでも抜き打ち(サルミアッキ)ができる構えだ。


 「それで、その話のどこあたりが怖い話なのか。申し開きを聞きましょう」

 私の視線にひるまず、後輩(バカ)は語り始める。


 「バカ(仮称)くんの好きな肉じゃが作ってきてあげたよ」

 彼女はそのまま当然のように部屋に上がろうとする。

 彼の必死の抵抗むなしく、部屋にあがる。

 彼女を迎えたのは別の女性の声。


 「修羅場か? 修羅場なのか?」

 別のバカは興味津々だが、私はモテるやつが嫌いだ。

 サルミアッキの鯉口を切る(?)。

 「ある意味、修羅場になりました」


 後輩(バカ)の元彼女を迎えた声は

 ”Do it! Do it! Now!”

 というセリフ。

 

 「ワールドワイドか? てめえの恋のアヴァンチュールはワールドワイドなのか?」

 別のバカが身を乗り出す。

 私は落ち着いて、サルミアッキを鞘に収めた。


 「いや、まぁ……」

 後輩がにやける。

 後輩(バカ)は外国製のいかがわしい作品を鑑賞していた最中であった。

 画面に映し出されるブロンドの女性を見て、元彼女は激怒したそうな。


 途中でオチがわかった私は、彼の肩を静かに抱いた。

 どうして、途中で私がオチを察したのか、察しようとしてはいけない。

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