一人を楽しむ
一人暮らしで恋人もいないという生活を続けていたら、それがどんどん楽しくなっていった時期がある。
恋愛映画とホラー映画と犬映画に前衛映画というわけのわからない組み合わせで映画を見る。
恋愛映画で見た失恋したときの行動のまねと称して、でかいアイスクリームを買ってきて、それを抱えて食べる。
最後の失恋なんてのは、もうずっと前なのに。
恋愛映画を見て泣き、ホラー映画を見てわめき、犬映画を見て泣き、前衛映画を見て居眠りした。
それだけではない。
ちゃんとイベントもこなすのだ。
クリスマスには鶏ももを(家族連れが家に帰り着いてたたき売りになったあたりでスーパーに突撃して)買ってくる。ターキーなんてものを売る店は知らなかった。
キリスト教圏のホラー映画を見ながら、醤油ベースで甘辛く味付けされた鶏ももをもりもりかじる。
お菓子入りのブーツとケーキも(どちらも翌日以降のたたき売りでだが)買う。
バレンタインデーには義理チョコを机の上に並べて、ビールを飲みながら『方舟さくら丸』ごっこをする。
誕生日には、回転寿司で皿と財布の中身に思いを馳せながらビールを飲む。
帰り道はほろ酔いで中古ゲームを自分のプレゼントに買う。
書き出してみると、悲惨にしか見えないのだが、当時の私は本気でそれが楽しかった。
ただ、何が楽しかったのだろうかは、どうしても思い出せない。
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