いつもこころにひほうかんの巻

大好きだったのに(エロ回)

 私は芸術を解さない。

 展示の類を眺めるのも、得意ではない。

 だから、ミュージアムと総称されるものは、大抵の場合、苦手だ。

 誰かの付き合いでついていくことはあっても、自ら足を運ぶことはある時を境になくなった。

 そんな私が自分の意思で足を運び、そのうち、また行こうと思っていたミュージアムがあった。

 その名もエロティシズム・ミュージアム。

 赤い風車のある歓楽街にある。名前からしてアレなミュージアムである。

 中には性をモチーフにした美術、工芸、人体改造についての展示であふれていて、その情報の洪水に驚いたことをおぼえている。

 なお、バカの魔窟で渡仏経験のあるバカはそろって、ここを訪れていた。

 お前ら、頭の中でピンク色すぎるだろう。

 

 それはさておき、この文章を書くにあたって、検索をしてみると……

 

 Musée de l'érotisme (Paris)

 https://fr.wikipedia.org/wiki/Musée_de_l'érotisme_(Paris)


 閉まってしまっていた……。

 ああ、私が喜んで入れるミュージアムがなくなってしまった。

 悲嘆に暮れたところで、記事の名称に気がつく。

 わざわざParisと但書しているということは各地にあるのかしらと思って、リンクをたどる。


 Musée de l'érotisme

 https://fr.wikipedia.org/wiki/Musée_de_l'érotisme


 私は俄然元気になる。

 この手のミュージアムは、世界各地にあるのだそうだ。

 そして、もちろん、我らが日本についても触れられていた。

 「日本ではしばしば秘密の財宝のミュージアム(hiho-kan)と呼ばれる」

 もちろん、秘宝館だ。

 でっかいナニかが飾ってあるアレだ。

 ためしに言語を日本語版になおすと秘宝館の説明が出てきた。

 フランス語版よりも記述が厚い。

 俺たちはエロい! フレンチキッスの国よりもエロい! 

 エマニュエル夫人がなんだ! 団地妻だぞ! エロエロエッサイム、我は求め訴えたり!

 

 ナショナリズムの熱狂に身を焦がした私は、そこでふと思い出す。


 私は秘宝館に足を運んだことがない。

 私の知識はすべて受け売りである。

 おそらくサブカル系の本や雑誌や仲間内の会話で仕入れたもので知った気になっていただけなのだ。


 そんなのだからこそ、外国でその手のものに行ってことさらに喜んだわけだ。

 足元に同等か、それ以上に誇れるものがあるのかもしれないのに、それに目を向けない。考えてみれば、先程喚いていたときに出した日活のアレも未履修である。履修したバカに聞いた受け売りでしか無いのだ。

 

 これはいけない。

 私は自分を大いに恥じた。

 行くべきだと思うが、我が家には太郎丸(仮名)と次郎丸(仮名)がいるので、彼らを預けないことには秘宝館にも入れないだろう。

 

 秘宝館に行きたいと騒ぐぐらいなら、カジンもまたバカがわめいている程度で済ませてくれるはずだ。

 ただ実際に犬を預けて行くのだとか言い出したら、般若の形相になるのではないか。

 どなたか良策をお持ちの方がいらしたら、授けていただきたく。

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