テレパス犬
犬の感情表現は慣れてくると、それなりにわかるものだ。
わかりやすいものの一つにプレイングバウというものがある。
ヨガをやっているわけでもないのに頭と上半身は伏せて、尻だけあげる。
「ボクは楽しいのです!」
ここから、他の犬に向かって反復横跳びめいた動きをはじめたら、
「遊びましょう!」
である。
ちなみに伏せて、他の犬をじっと見つめている時は、
「ボクはこれから君を追っかけちゃうぞ!」
だったりするので、少し注意しないといけない。
他にも相手の臭いを嗅いだり、嗅がせたり(あるいは嗅がせなかったり)で彼らはコミュニケーションを取っている。
我が家でもこういうコミュニケーションは存在するが、どうにも、それだけでは説明できないものもある。
次郎丸(仮名)がおやつをねだる。
我が家では片方がおやつを欲しがってもあげない。
兄弟は力を合わせておやつを勝ち取りなさいと、日々彼らに言い聞かせている。
次郎丸(仮名)が私に期待に満ちた目で問いかけてきても、静かに首をふるだけである。
すると、どうであろうか。
次郎丸(仮名)が虚空を見つめる。
しばらくすると、太郎丸(仮名)がどこからともなくあらわてのろのろとケージに入っていくのである。
視界に入るところならばわかるが、たまに無精をしてたたんでいなかった布団の中からはいでてくることがある。
次郎丸(仮名)は無言なのに、どういうわけか太郎丸(仮名)に呼びかけていることになっているらしいのだ。
こいつらにはテレパシーがあるのではないだろうか。
たまに思う。
次郎丸(仮名)がたまに眉間にしわをよせて、こちらを見つめているのは、いくら念を送っても無視する鈍感な飼い主たちにあきれているのかもしれない。
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