立蝮帖

無事是名馬なり

　スポーツには怪我がつきものである。

　私がやっているスポーツは、負傷率が低いものだが、それでも怪我はある。

　骨折、疲労骨折、椎間板ヘルニア、アキレス腱断裂、肉離れ、同期たちはよく怪我をしていた。

　常時半数ぐらいがコルセットを巻いていたし、常に誰かしらかが入院していたような気がする。

　私は技術、筋力、持久力、闘争心、熱意様々なもので同期に置いていかれていたが、丈夫さだけは人並み以上だったらしい。あるいは熱意がなかったので、無理しなかったのかもしれない。

　大きな怪我もなく引退した。

　無事是名馬なりという言葉があるが、嫌いだった。

　しばらくして再開したあと怪我をするようになった。最近など、年のせいか、怪我しまくりである。

　関節にはネズミが走り、筋肉は裂け、靭帯は切れる。

　現役の時無縁だった松葉杖に複数回お世話になるとは思いもしなかった。

　無事是名馬なりという言葉がうらやましい。