しあい
たいした回数ではないが、毎年、何らかの対外試合には出るようにしている。
段と年齢が上がってくると、試合は嫌という方もでてくるのだが、私は嫌いではない。
ここ二年は負け越していない。
相手が平均一回りは若くて機体能力で圧倒的ハンデをつけられているにしては健闘していると自画自賛している。誰も褒めてくれないが、褒めてほしいものだ。
試合というのは、ものすごく疲れる。
ほんの数分とはいえ、集中しているわけで全集中の呼吸とか使えない私みたいなぼんくらは立っているだけでHP、MPががんがんと減っていく。
試合巧者の若者たちはこんなものを数こなしているわけでその集中力には本当に恐れ入る。
相手にはやられてはいけないという緊張感が高まるにつれて、少しずつ相手との間には私を押し戻す壁ができる。
壁を作っているのは私自身だ。自分の恐怖で作り出した見えない壁にはばまれ、もがきながら、前へ進む。
以前、有段者ならば、暴漢がきてもそれなりの立ち回りができるでしょうなどと冗談交じりで言われたことがある。
万が一そんな人に会ってしまったら、物を投げて逃げるだけですと答えた。
頭のネジが切れてしまっている相手に生半可な技術は役に立たないし、何よりも自分自身でさらに大きな壁を作り出すに違いないのだ。へっぴり腰にならずに立ち向かえるのは達人か自分もネジをねじきってしまった人だけである。どちらにも絶対になれないという自信だけはある。
そういうことがわかるようになるだけでも武道には効用があるのかもしれないなどと思う。
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