ワンダフルドライブ

 我が家の犬たちはドライブ好きである。

 車に乗るということは、どこか楽しいところに行くことであるとインプットされている。

 後部座席のドライブシートの上で重なるように寝ながら楽しい場所に運ばれるのを待つ。

 景色を憶えているのか、何度か行ったところになると近づくにつれてテンションがあがってくる。特にドッグランに行くときはテンション爆上がりである。ハイテンションになった彼らは当然寝てなどいられない。ドライブシートの上で立ち上がり、窓から外を眺めなている。到着は今か今かと落ち着かない様子だ。


 最初に興奮を抑えきれなくなるのは太郎丸(仮名)だ。外を眺めながら、ひーひーと鳴き出す。だいたい、到着一〇分前くらいからずっと鳴いている。

 「”待”ってたぜェ!! この”瞬間とき”をよォ!!」

 テンション高すぎである。

 車のドアが開く頃には、太郎丸(仮名)はすでにかなりお疲れである。お前は遠足前夜にはしゃぎすぎて当日ぐったりしている子どもか。

 

 次郎丸(仮名)はもう少し我慢していられる。しかし、最後の曲がり角を曲ったあたりで、彼にも我慢の限界が来る。

 遠吠えが始まる。

 「我が名は次郎丸(仮名)! 狭苦しいマンションよりこの地へ来た。そなたたちはドッグランに待つと聞く優しい犬か?」

 誰に呼びかけているのか知らないが、そんな遠くから呼んでも聞こえないって。

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