一人称のお色直し

 日本語は人称代名詞が多い。

 時と場合によって、皆様も使い分けていることだろう。

 かくいう私もTPOにあわせて使い分けている。というか自然と使い分けている。

 とりわけ一人称は様々なものを用いてきた。


 高校生あたりまでは「俺」だった。

 今でもその頃の知り合いに会うと「俺」になる。

 「俺」な私は結構言葉遣いが荒いし、いやらしい話ばかりする。

 「俺」は大学に入って一時期鳴りを潜めていたが、川原の石の裏に潜むバカたちと出会ってから再び元気になった。


 ただし、「俺」は上級生と話すときには常に「自分」になった。

 運動部時代に暴力的に形成された「自分」な私は今でも上下関係が厳しいところに行くと、「自分」の番ですかとばかりに顔を出す。

 「自分」は常に小走りで働いている。口癖は「自分がやります」「自分がいきます」である。


 大学で異性と話すとき、そうでなくとも異性がその場にいるときは「僕」だったらしい。

 「僕」は幼い頃もよく現れていたが、新しい「僕」には幼き頃の無垢さは存在せず、ただただ下心しかない。

 「僕」な私はおとなしめでインテリぶろうとするところがある。

 殴りたくなるやつである。同時に蹴りたくなるやつでもある。


 「私」な私は一番無難である。

 今ではこれの出番が一番多いようだ。

 あまり面白みがない。


 そろそろ新境地を見つけないといけないかもしれない。

 ある日、突然、「レンはね」とか「おいは」とか言い出しても生暖かく見守ってほしい。

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