罠を仕掛ける

 バカの魔窟ではよくお互いに足を引っ張りあった。

 インプットもアウトプットも気力と体力をけずるし、ストレスも溜まる。

 どうやってストレス解消をするかというと、誰かの足を引っ張るのである。バカたちは中途半端に理論武装しているから、これもまた人の営みなどとうそぶきながら、ストレス解消をする。


 それゆえ、バカの魔窟にはいつも漫画が置いてあった。

 部室じゃねぇんだから、そんなもの持ってくるんじゃねぇよとは誰も言わない。

 漫画を目立つところに置いておくと疲れた誰かがひっかかる。

 やつはしばらく論文に戻れない。

 「ざまぁ」


 これを私たちはトラップと呼んだ。

 罠はただ仕掛けておくだけではない。

 「んぁああ」

 などと誰かが疲労をにじませるような声を上げたときに、すっと差し出すという指向性地雷のような(?)使い方もされる。

 やつはしばらく申請書に戻れない。

 「ざまぁ」


 私も一度DEATH NOTEトラップをまともに食らったことがある。気がつけば朝だった。あやうくDEATH NOTEに殺られるところだった、締切が。


 悪魔に耳を貸さず、パソコンのスクリーンから目を離さなければ避けられるというものでもない。

 夜中、突然メッセージが届く。

 開いてみるとおもしろ動画のリンクが貼られていたりする。


 おい、英語論文読んでいるときに、◯んこ音頭とか送り付けてくるんじゃねぇ。

 こうしてバカたちはお互いの脳みそを攻撃し合うのである。

 バカにつける薬はないもんだね。

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