サークル
中高と運動部でどつきまわされた私は大学入学に際し、体育会に入らないことだけは決めていた。
楽しく(できることならば女の子と)過ごしたい。だらだら(できることならば女の子と)過ごしたい。
上野の年配者向け洋品店で買い込んだ服(そもそも買いに行くところからして間違っている)に身をつつみ、読んでもいない哲学書をカバンにいれた私の目的はそれだけであった。一応、学問にも打ち込もうと思っていたが、その理由も結局のところ「黒石くん、頭いいのね、ステキ!」と女の子から言われたいというのが根本にあるので極めて不純であるうえに色々と間違っている。
運動部であるにもかかわらず運痴のう◯ちだったのでオールラウンドスポーツサークル的なものは除外した。テニスボールとか小さすぎて叩けない。叩くのなら、人の頭ぐらい大きくないと無理なのだ。寒い冗談で滑るのは得意だが、冬にスキー板で滑るのは苦手だ。
もちろん、上野で買い込んだ服で私の護身はすでに完成している。向こうも私に声なんかかけてこない。
絵や文章がかければ創作系のサークルに入ったのであろうが、どちらもできない私はその手のサークルのあるあたりも避けた。
おずおずといくつかのサークルの部室をまわり、結局、同じ学科の先輩が多いサークルに入ることに決めた。
時間割のことで親身に相談にのってくれたし、ゆるい感じが気に入ったからだ。
総勢一〇名ちょっとの小さなところで、一年生は私を含めて三名しかいなかったが、居心地の良いところであった。
講義のない時間に行くと、同じく講義のない先輩が古いゲームでレベル上げをしているようなところであった。ほどなくして私もいつのゲームだよみたいなので暇つぶしをするようになった。
インターン的なものもなかった世代なので、日中は講義室と学科研究室と図書館と部室と芝生のあるあたりをうろうろした。
活動(といってもゆるいゼミ発表みたいなものであった)のある日はそれに参加し、あとで皆でご飯を食べに行った。
優秀な先輩が多かったので、勉強のことについては何でも聞けた。バカな私にはとてもありがたかった。
夕方、活動のない日はバイトをしているか、部室でだらだらとしていた。
これぞモラトリアムという感じのゆるい生活。
最近の若い人は忙しくてモラトリアムなんて言葉だけのものになっていそうに見えることがある。
大変だよなぁ。
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