粉ものバトル

 粉ものには郷土愛がつまっている。

 そして、その郷土愛は時には他者との軋轢をうむ。

 粉ものはアリーナである。

 人々が出会い、語り合い、殴り合うアリーナである。


 私は粉ものが好きである。

 お好み焼きがとりわけ好きだ。

 家で焼くお好み焼きにはソバかうどんが入っている。

 別に私の郷土とは一切関係ない。単純に色々と食べ比べて、自分の好みにあったものを再現しているだけだ。


 郷土愛的なものを抱く粉ものとしては、もんじゃというのがある。へらでちまちま食べるのが楽しい。これはこれで楽しいし、欠かせないものである。


 とある先輩と外国の方と酒を飲んでいたときのことである。

 どのように始まったのかは思い出せぬが、粉ものの話になった。


 「日本にはもんじゃ焼きっちゅうのがあって、あれはゲロや!」

 なぜか先輩が力説した。

 「せ、こわっ?ああん、ぁんだとぉ?

 私のスイッチも入る。

 「が人のこといえますか? 刻んだキャベツや具やらぐっちゃぐっちゃ混ぜて、変わらんでしょう? 酔っ払いの生産物でおままごとでちゅかー? あれれ? ああ、そうですよね、ありゃ、鉄板にゲロでもぶちまけてるんでしょう?」

 wの文字を文末に連打しそうな勢いで私も煽り返す(注)。

 「わざふぁ◯くんだとこらぁ!」

 先輩が立ち上がる。

 ここで目の前の外国の方が、「クレープサレこそ至高、下がれ下郎ども」とか言い出してくれたらネタとして面白かったのだろうが、紳士淑女なお二人は我々の下劣な煽りあいには加わらず、(あのときは気づかなかったが、おそらく少し困った顔で)微笑むだけであった。


 異文化理解に大切なのは寛容さ、互いを煽り続けるバカ二人は反面教師にするようにというのがこのバカ話の教訓であり、もんじゃは決してゲロなどではないということはテストに出るところなので憶えておくように。


注:売り文句に買い文句というやつなので許してね。粉もの全般ラブです。

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