おかず考(notエロ回)

 先日、おかずを一品増やすという表現を見た。そういえば、学部生のときに講義室の隅っこに河原の石の裏の虫のごとく群生していた仲間の一人も似たような表現をしていたことがある。曰く、自分が仮面浪人したせいでおかずが一品減った。

 我が家でこのような表現が用いられることはなかった。

 裕福であるといいたいのではない。日常においておかずは一品しかなかったからである(冷奴のようなすぐに出せるようなものについては、ここではおかずに数えない)。

 複数のおかずが出てくる日、それは非日常、カーニバルである。

 こう考えることによって自分の好き嫌いの原因が少しわかってきた。

 豆腐自体は好きなのに、どうして湯豆腐が嫌いなのか。湯豆腐がおかず枠を占領するからである。出汁用昆布と豆腐しか入っていない正統派すぎる湯豆腐しかおかずがなければ寂しいのだ。

 どうしてチャーハンや焼きそばが嫌いだったか。これは飯枠とおかず枠を一気に占領する割には中に入っている具(実家のチャーハンはハムとネギと卵しか入っていない)の数が少ないからではないか(カレーは好き)。

 煮物は小鉢で出てくるものではなく、それだけがおかずであったから筑前煮とかも嫌いだった。

 それでもなかなか母を責める気にはならない。

 おかずを複数調理するのは難しい。私もカレー以外ではおかずを複数調理できない。

 カジン実家はおかずが複数出てくる家である。カジンもそれを真似しようとしていたが、それに任せていると夕飯の前に日付が変わることが頻発した。お願いしてやめてもらった。私が料理当番の日には(カレー以外は)スピード重視である。


 この話の結論は、おかず増やしたり減らしたりできる人たち、すげーである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る