第5話異世界に来たんですけど2

夜空から一枚の紙が俺の手に落ちて来た。

紙と言っても日本語で書かれた新聞紙なんだけどな。

多分神様はこれを腹にかけて温かくして、いけと言う事だろう。

神のご意向の導きだと思うように、新聞紙を腹の上にかけた。


「主一撃で殺せなかった俺を許せ。次は確実に殺してやる」

コスプレ好青年が、何やら詠唱を初めていた。

日本語いや英語でもない。この世界の特有な言葉だろ。

詠唱が終わると夜空を覆い尽くす様に、赤く燃えている隕石が現れた。

「主これで終わりだ」

と言いながら手を振り下ろすと、隕石が俺の頭上へとゆっくり落ちた。

周りの火柱は隕石の風圧で消え、落ちた場所は大きな窪みが出来た。

一ヵ所を除いては。


「あれ何で俺の場所だけ」

何故だか分からないが腹部にかけていた新聞紙が神々しく輝いていた。

「主は何者だ?」

俺にもその答えは分からない。

ただ一つ言える事は軋む身体を無理やり起こし、新聞紙を筒上に丸めコスプレイヤーに向けた。

「俺がまだやれるって事だよ」

「ほぉー俺とやり合うか? 面白い。面白いぞ」


コスプレイヤーが俺の顔面に拳が当たる直前に、嵐の様な雨が一瞬で降りだした。

「今度はなんだ」

「さすがに俺に分が悪いか?」

その言葉を残し、俺の前から姿を消した。


コスプレイヤーが居なくなったのを感じたのが、嵐の様な雨が一瞬で消え、空には日の出が出始めていた。

俺はいったいどのくらい戦っていたのだろう。

安堵していたら、先ほど降った雨で水溜まりができ、そこから透明人間の様な人の形をした物体が現れた。


「お前は私と一緒に来てもらう」

人が水の中にいたら喋れない様な君の悪い声が俺の耳に話しかけてきた。

「ったくどいつもこいつも。俺はこの世界の事は何一つ知らないのをいいことに、勝手に話しを進めるんじゃないよ。お前の言う事は聞かん。とっとと俺の前から消え失せな」

俺は標的をコスプレイヤーからこの透明人間に変更した。


「そうか。手荒な真似はしたくなかったんだが残念だ」

「ふん。こっちにはな隕石の攻撃をも防いだ新聞紙様があるんだよ。てめーこそ…」

刹那。

俺が言い終わらないうちに、周りの空気の酸素がなくなり、俺は窒息し意識を失った。

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