第3話天国から地獄へ③

「旨いべ?」

「はい。ありがとうございます。お名前はなんて言うんですか?」

「名前は…忘れちまった。もう何十年とこの生活を続けているから」

「そうなんですね」

長髪の老人と俺は小型の遊具から外にでると、空は曇天になっていて激しい雨粒が音をたてながら、道路にうちつづけていた。

「おらの家にくるべさ」


行く所がない俺は黙って、長髪老人の後をついて行ったら河原に到着した。

やっぱりイメージ通りのブルーシートをうまく使い、三角テントにしていた。

長髪は三角テントの中に黙って入っていった。


テントの中は以外に広く、生活必需品は全て揃っていた。

ただイメージ通り地面にはびっしりと、段ボールが敷かれていた。

「久しぶりの客人だ。よかったらこれでも飲めや」

一言飲むとあら不思議。

さっきまで死にかけていた身体がみるみる良くなっていく訳ではないが、ずいぶんと身体は軽くなったような気がする。


「あ、でもすいません。貴重な飲み物を」

「気にすんな。久しぶりの客人なんだから。お前こっちの住人になる気か?」

長髪の老人は真剣な眼差しで、俺の眼をみた。

「それはどういう意味ですか?」

「言葉通りの意味だ。俺みたいに底辺で暮らすのか、それとも一念発起して現状を抜けだすか?」

「そんなの決まっています。俺はここで暮らすしか選択肢はないんです」

「何でだ?」

「働きたくても働けない状態なんです。しかもお金だって」

ポケットの中に手を突っ込み、小銭が数枚だけあるのを見せた。


俺自身が思う。

何て惨めなんだ。

「今お前さん。惨めだと思ったかい?」

「え?」

「その小銭があれば苗が買える。そしてその苗が育てば作物が採れる。そしてそれを食べれば空腹にはならない。その食べた一部を土に植えればまた成長して一年は過ごせる。そうすれば人は自ずと生かされる。働く事が全てじゃない。稼ぐ事が幸せなんじゃない。お前がどうしたいかなんじゃよ」


「神様ですか?」

いや、この人の身なりだと仙人だな。

「ただのホームレスじゃよ。どうだ少しは元気でたか?」

「はい。すごくでました。それじゃ俺は早速この金で苗を買ってきます」

「ちょっと待て」

仙人の言葉を聞き終える前にテントを出ると、俺は川の濁流に流された。


何でこんな事が。

川の濁流は予想以上に激しく、俺はゆっくりと意識を失った。

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