会議である
「と云うわけで、彼女も同好会に入る事になりましたー」
「待て。説明しろ」
そうツッコンだのは、先程から部室の椅子に座っている我鬼である。
新しい依頼があるとの話の後、綿雪に「協力者を連れてくるから待っていてねー」と言われ、柏村と部室に帰ったのち、綿雪の帰りを待っていたのである。
が、綿雪は一時間経っても帰ってこず、手持無沙汰のまま部室でじっとしていたのである。
待っているメンバーは探しに行くことも考えたのだが……綿雪は津島を引っ張って行先も告げずに言って仕舞ったので、探しに行けばすれ違う可能性もある。それを考えてグダグダとしていた結果、一時間以上待たされてしまったのである。
「全く……これでもかと待たせおって、一体何をしていたのだ」
「いやあ、話し合っていたらすっかりと遅くなってしまって……」
我鬼の詰問に、友達との約束に遅れた時の様に返す綿雪。
本当は奈都の持っていたオカルト系の色々を眺めまわしていただけなのだが、怒られるのを察してか綿雪は言わない。実際は長話も入っていたので噓では無いのだが、大半は前者の方にに時間を食われていた。
それを察してか、ギロリと綿雪を睨む我鬼。
目を逸らす綿雪。
バレバレやんけ。
「……はあ、もういい。で、その協力者とは誰の事だ? 貴様らしか帰っていないではないか」
確かに、部屋の中に奈都の姿は見えない。
正直、冒頭の台詞を言われたとき、待っていたメンバーは誰の事か全く分かっていなかった。
いなかったんかい、と思われるかも知れないが、そうではない。
「いや、今居るよ?」
「は? 何処に……」
「扉前の廊下」
「……はあ?」
怪訝そうな顔をする我鬼。そんな彼に一言。
「人見知りなんだって」
「……人見知りか」
「うん。人見知り」
そう、奈都は人見知りだったのだ。
啖呵を切ったはいいが、部室前で怖気づいてしまったのである。
人見知りならば仕方がない。このまま扉の外から会話に参加してもらおう……なんてことにはならず。
「まあ無理やり入れるけどね」
と云った綿雪に、部室のソファーに投げ込まれる結果となったのだが。
奈都の自己紹介が終わり、他のメンバーもちょっとした紹介をした後。
「よし、じゃあ依頼内容を確認しよう」
と、部屋で唯一立っている綿雪が言い出した。
そう云えば、詳しく聞いてないな。
と柏村は思う。
というか読者の皆様への説明がまだでしたよね。すみません。全ては作者の文才が悪……はい、すみませんでした。
「まず、依頼してくれたのは吹奏楽部部長の三辻さん。依頼内容は、音楽室に出る七不思議の解決」
「七不思議?」
聞いたのは平井である。それに対し奈都が返す。
「あ、ベートーヴェンの肖像画が夜中に歌い出すって言うやつと、音楽室のピアノが勝手に鳴る……っていう奴です」
「へえ。でも噂じゃないの? そういうのは」
「いや、ベートーヴェンの方は目撃者、と云うか、聞いた人はいないんですけど、ピアノの方は結構聞いてる人がいて……」
「ふうん……まあいいや、本当か本当じゃないかは」
「……多分……ほんとう……です」
だんだん声が小さくなっている奈都。如何やら奈都と平井は相性が悪いらしい。
二人の会話に、まあまあ、と合いの手を入れ、綿雪は続ける。
「それで、依頼されたのはピアノの方なのだよね。依頼人曰く、夕方忘れ物を取りに行った部員が、何人か鍵のかかった部室でピアノが鳴ったのを聞いたらしくて。それで皆怖がって部活に支障が出ているんだってことで依頼されたんだけど、此処で一つ提案が」
「提案、ですか?」
反応したのは柏村である。
この時点で柏村以下の生徒(我鬼以外)は、放課後音楽室に乗り込んでピアノを見張る、みたいな事を考えていた。故に、
「折角だし、午後十時以降に学校に乗り込んで、七不思議全部解決しない?」
と云う綿雪の言葉に、皆意外な顔をしていた。
と言っても、その後の反応は各々結構違っていたが。
「はあ、そうですか」
「異論無い」
「……」
と、柏村、我鬼、竜胆。
「えー。めんどうくさいなあ」
「え!? なんでそんな面倒な事をしなきゃいけないのさ!」
「ちょ!? 危険ですよ、止めた方が善いです!」
と、平井、津島、奈都。
で、そんなみんなの反応を考慮する綿雪ではないので。
「と云うわけで、今週金曜日の夜十時、雑用係の三七十と案内役の彦(さと)ちゃんと解決係のショウセイ君は校門前集合ねー」
と、強引に話を進めて仕舞った。
案の定、柏村の、
「え、俺らは行かなくて良いんですか?」
と云う質問と、津島の、
「え? 僕雑用係なの? 要らなくない? 僕その時寝ていて良くない? と云うか柏村で良いよね、それ」
と云う文句と、我鬼の、
「小生の名前はショウセイではない!」
と云うツッコミが入った。
勿論後半の二つは華麗に無視し、綿雪は柏村の質問に答える。
「いやー。そんなに大人数で乗り込むわけにも行かない……しね戻ってこなかった時の保険も要るし……」
「先生? 今小声で怖い事言いませんでした?」
「ナンのコトかな?」
綿雪は笑ったままで誤魔化すと、其の儘他の質問が飛ぶ前に素早くドアノブを握る。
「じゃ、今日の活動は此処まで。平日には活動があるからちゃんと来てね。あそうそう、木曜日の放課後私は居ないから、そこのところは宜しく。その間の事は三十一谷先生に頼んであるから。
「え? 先生??」
言うと綿雪は其の儘、ドアを開け出て行った。
唐突な出来事に、部室内はポカンとなった。
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