部活が始まりました
「と云うわけで、此処に『なんでもお助け相談会同好会』が発足しましたー」
パチパチパチ。と、綿雪が拍手をする。
現在の場所はクラブ棟一階の端の部屋。集合メンバーはさっさとやって来た我鬼、津島が落ちた後に来た柏村と竜胆。そして部室のソファーで寝かされていたところをタイミングよく起きた津島である。
「いやパチパチパチじゃないよ!」
と津島が突っ込んだ。
その様子に、柏村と竜胆が思わず目を見開く。
津島は基本的にボケ役であるから、ツッコミに回っている状態が珍しいのである。
「ん? どうしたの?」
首を傾げる綿雪。
そこに、津島が畳みかけるように言う。
「いや、今気が付いたのだけれど、本当に今気が付いたんだけどさ……四人しかいないじゃん!」
……あ。
確かに、同好会発足の条件は顧問一名に生徒五名。
此処に居るのは、顧問、綿雪が一名。生徒、津島、柏村、竜胆、我鬼の計四名。
計算では、微妙に人数が足りないことになる。
なんと言う事だろう、綿雪は人数を集め損ねていた。此れでは同好会は発足できないことになってしま……
「否、いるよ?」
「え?」
「ほら、
言うと、綿雪は、部室の角に設置されているロッカーを指差した。
え? と思いつつ津島がロッカーを凝視していると、そこから、なにやら物音がする。
……え?
固まっている津島を置いて、近くにいた柏村が恐る恐るといった風にロッカーに手を掛ける。そしてゆっくりと引くと___。
「え? なに? 何か用?」
と、中には生徒が一人はいっていた。
「ううぉっ」
と、柏村が尻もちをつく。
出てきた人物は付けていたイヤホンを外し、そして立ち上がる。
「あれ? もう自己紹介始まってる?」
意外そうに言いながらロッカーから出ると、そのままつかつかと部屋の中心へ移動する。
ネクタイと上履きの色からして二年生だろう。ツンツンとした黒髪をして、まん丸の眼鏡を掛けている。
綿雪は中央へ移動した二年生を手で示すと、一言。
「はい、二年生の
「……えっと、先生、突っ込んでも良いですか?」
柏村が聞いた。
「うん。何だい?」
「えっと……この人が、五人目……?」
「うん。そうだよ。まあ正確には一人目なのだけれどね」
「……なんでロッカーに?」
「面白く登場したかったのだそうだよ」
「は、はあ」
ありがとう柏村。君が居るお陰でツッコミが大分楽だよ。
「えーっと、さっき言われた通り名前は平井柳ね。頭脳労働専門だから、そこのところ宜しく。あ、あとあれだ、呼び方は何でもいいよ。趣味は美味しいものを食べることと、音楽を聴くこと。あとは……」
平井の長々とした自己紹介の後、他のメンバーもぽつぽつと自己紹介を始める。もっとも、他のメンバーは殆ど知り合いだった故、大体が平井に向けたものになったが。
「それで先生、このあとはどうするんですか?」
柏村が聞いた。それに対し綿雪は、
「依頼が来るまで待機!」
と返す。
どうやらボランティア部みたいなものとは言っても、自分達から動く感じでは無いらしい。
「じゃあ寝よう」
そして綿雪の言葉を聞いて、そう言い出す津島。
それに対し、お前なあ、と柏村が呆れる。
「こら三七十、依頼が来るかも知れないだろう?」
彼に続けて綿雪が窘(たしな)めた。が、これに対し津島。
「一日目に依頼なんて来ないでしょ。じゃあおやすみー」
と、見事にフラグを立てて見せた。
スピー、スピーと寝始める津島。
そして。
コンコン。
と、次の瞬間扉が鳴った。
「はーい」
綿雪が扉を開け、この後津島の睡眠は早々と中断されたのだった。
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