学校の七不思議編
白狐・霜月の夜
綿雪が津島に付きまとい始めてから、約三週間が経過した。
その間、この妖狐は兎に角津島に付きまとった。
休日放課後朝方、様々な時間帯に神出鬼没に津島の前に現れ、何かしらの悪戯やらなにやらを実行していた。
因みに彼女は現在、津島の家の屋根裏部屋を寝床にしている。とは言っても、あまりちゃんと使っているようには見えない。
面倒を見ろ、と津島を脅したその日から勝手気儘に出入りしているにだが、そういった割にはあまり頻度は高くないのだ。
一体何に使っているのか、そもそも借りた意味はあったのか、と言うかたまにおばあちゃんが出入りしてると思うのだけど大丈夫なのか。
え? 家の人の許可? 取っていない。なので本当に勝手に使っている状況である。良い子の読者は真似をしてはいけない。普通に不法侵入である。
とまあこの様に、謎の妖狐は津島にちょっかいをかけつつ、何かの用事をしているようなのだ。
そしてそんな光景が日常になり始めた今日この頃の……ある夜に、綿雪は一人、林の中で佇んでいた。
「……」
無言で見下ろす先には、何やら黒々とした残骸。何かが燃え尽きたような其れには、時折チラチラと白い炎が燃えている。
綿雪は其れにかがみ込み、真ん中の辺りに手を突っ込むと、そこから何かを取り出し、月明かりの下観察する。
それは二つの球体だった。
大きさはビー玉程だろうか。然し色は黒く濁り、中心で赤と紫の靄が、不気味にゆらゆらと揺れている。
そして次第に、それに触れている綿雪の指先が、染みのような黒でじわじわと染まる。
……随分と、厄介なことになっているね。
静かにそう思うと、白い妖狐はそこから消えた。
次に妖狐が現れたのは、同じ町の中にある、少し大きい神社の境内。
裏手から神籤掛みくじかけの方へとやってきた綿雪は、ふとそこに端が赤く着色された神籤が結ばれているのを見た。
綿雪は少し不審そうな顔をした後、何の躊躇もなくそれを解き、中身を確認した。
「……ふぅーん。これは……いや、逆に好都合かな」
どこからどう見てもおみくじにしか見えない内容から何を読み取ったのか、綿雪は呟いた。
その後彼女は微笑を浮かべると、ふと視線を動かした。
ちょっとした高台にある神社からその方向を見れば、町の一部を見下ろすことが出来る。そしてそこから見えるひときわ大きい敷地を持つ施設、幸宮高等学校に視線を向けると、誰に言うでもなく、言葉を零した。
「なら、拠点が必要だね」
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