一方、何だか怪しい人も居りまして
本日は、目標、幸宮高校文化祭の二日前。
人里離れた、忘れられた廃神社。秘密の会合にうってつけの此の場所で、私は二人の”お客さん”に話をしている。
「――という訳です。分かりましたか?」
一通り要点を話してから聞けば、羽の生えた二人のお客さんは、その無邪気そうな子供の声で返した。
「うん。人間を襲えばいいんでしょう?」
「怖がらせればいいんでしょう?」
「ええ、その通りです」
如何やら要点は伝わっていたようだ。微笑んで首肯すれば、ふふん、とお客さん達は笑った。
そう、この二人には”代金”として、二日後、幸宮町にある高等学校で暴れて貰う。
お客さんの正体は天狗。人ならざるモノ。
見た目も声も十代前半の子供のようだが、実際は私の十倍は生きているのだろう。天狗は人間よりもはるかに長命だ。
私は、そんな二人と契約を交わした。
「……ねえ、それは分かったけど、忘れて無いよね。其れが終わったら」
ふと、お客さんの一人が口を開く。私は相手の言いたい事を察し、静かに微笑んだ。
「ええ。忘れて居ませんよ。薬はちゃんとお渡しします。心配せずとも、妖怪さんとの契約はしっかり守ります。破ったら、後が怖い」
そう、この二人が僕の言う事を聞いてくれるのは、あくまで薬の代金だ。そこは分かって居るし、反故にするつもりもない。
逆も又然り。薬の代金分、二人には確り働いてもらうつもりだ。
前払い分も、後払い分も。
「お二人も忘れないで下さいよ。二日後の働きは、あくまで代金の十分の一に過ぎません。残りは後払いで、きっちり払ってもらいますから」
「うん。解ってる」
「解ってる」
二人は真っすぐこちらを見て、言い切った。
ああ、幸運だ。これほど強固な意志を持つ二人に出会えたのだから。然も彼等の種族が、山奥でひっそりと暮らす天狗で、私の助けを必要としている。
だから私は、彼らに協力して貰うことが出来るのだ。
「どうか宜しくお願いしますよ。お二人とも」
喜びを胸に、私は微笑みながら言うのだった。
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「あ、そうそう人間さん。僕達が襲う、その……なんだっけ、幸宮、こう、こ……ん? ご?」
「御殿じゃない? 藍平」
「あ! なるほど! 幸宮御殿! ……ん?」
「……高校ですね。昔で言う寺子屋なんかの現代版だと思って頂ければ」
「てらこや……? なんだっけ、それ」
「昔人間の子供が色々教えて貰ってた場所じゃない? 藍平」
「あー! 綿雪さんがそんな事言ってたねえ。昔有ったって。あれ、でも何を教わるの?」
「え? ぼ、僕に聞かれても分かんないよ」
「……お二人は、お幾つでしたっけ」
「え? 百五十歳?」
「違うよ藍平。まだ超えて無いよ。百十位だよ」
「えー! 絶対百二十は超えてるって!」
「……尋常小学校の時代だったか……」
ギャグを入れないと生きて行けない。(作者)
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