第99話 リリアベル・レポート4
わたしはリリアベル。ラオデール六賢国での騒動もひと段落ついたので、ここでこれまで得た情報をまとめておこうと思う。
今回はとくにこの星の歴史について理解が深められた。
■ラオデール六賢国
首都はリヴディンという名であり、雪深い土地に作られた都市になる。今は議会が選出した六人……通称〈六賢者〉によって統治されているが、昔は王政だった。
他国に比べて白精族が多いな。これについてはいくつか考察ができるが……いずれも根拠が乏しいので、今はおいておく。
遥か昔、白精族の男性が解放された奴隷たちを率いてこの地で国を興したのがはじまりらしい。
その男……初代王はこの極寒の地を栄えさせるため、大掛かりな魔道具を制作した。その魔道具は魔力を土地に行きわたらせ、大地を肥やすという効果を持っている。
天候を調整できるクリアヴェールといい、この国の根幹であるが、現在までその魔道具がどこに設置されているのか、またどうやって機能を維持し続けているのかは明らかにされていない。
クリアヴェールの管理者は6人に限定されている点といい、良くも悪くも古の魔道具の恩恵が大きな国と言える。
またアカデミーという研究者が中心になっている機関もあり、首都に住む人口の約2割は研究関連の職に就いていると言われている。まさに学問の国と言えるだろう。
■大図書館
研究者のレポートから古の記録まで、ジャンルを問わず多岐にわたって情報が保管されている。もともとはこの大図書館にあるという、2000年前の記録を見るために六賢国に来た。
古い記録は地下二階に集められており、六賢者の許可がなければ立ち入りできない。
だが実際には地下四階まで存在しており、地下三階には首都を多くクリアヴェールを制御するオーパーツが設置されていた。
地下四階には謎の巨大騎士人形が存在していたが、どういう由来で作成されたものなのか。またいつ頃から存在しているのかなど謎な部分が多い。
エンブレストはその存在を把握したうえでどこかに転送した可能性が高い。この国の学者たちとはまたちがう情報を得ているのだろう。
立ち入り許可自体は獲得できたので、タイミングを見てすべての情報を持ち帰りたい。
■古の精霊時代
考古学的に、約1万年から7千年前までの時代を精霊時代と定義しているようだ。そこからは六種族時代に入り、2000年前から五種族時代へと入った。
オーパーツと呼ばれる類のものは、この精霊時代に作成されたものを指す。現在の魔道具でも再現できないものが多く、技術体系といい謎が多い時代だ。
巨大騎士人形もこの時代に作成されたものだろう。精霊時代はその名のとおり、今よりも精霊化が多く起こっており、たくさんの精霊と人種が栄えていたと考察されている。
また精霊時代を記した記録などは限定的であり、ほとんどなにもわかっていない。
こうした事情もあり、精霊時代を解明しようとする行為を「歴史の真実に挑む」と言い表している。
歴史を研究する者たちからすれば魅力的なテーマである一方で、非常に難易度が高く取り組んでいる者はほとんどいないようだ。
まぁなにをどうすればいいかも曖昧だし、遺跡調査に魔獣大陸に行くのもハードルが高いからな。そして一生を捧げても、なにも解明できない可能性も高い。
アハトは偶然「歴史の真実を求めている」と言ったが、六賢者たちは大いに感心していた。このまま勘違いさせておいた方がなにかと都合がよさそうだ。
ああ、もちろんわたしはこの歴史の真実に挑むつもりでいるがな。
■メルナキア
若くしてアカデミーで3級修士となり、自分の研究室を持っている少女だ。
種族は白精族、身長159センチのAカップだ。白精族は種族として胸のサイズが小さい。
豊富な知識を有しており、また得た知識を活用する術も持っている。とくに関心のある分野は歴史であり、知っていることは語りたくて仕方がない性格だ。
父が大事件を起こしたが、そんなことより自分の研究がおもしろくてやめられないという、いい意味で研究者向きの気質だな。
人としての感情はいくらか欠失していそうだが、まぁたいした問題ではあるまい。
歴史の真実に挑むため。またアカデミーにいては触れられない知識を得るため、わたしたちについていくことを望んだ。
彼女の知的好奇心は好ましいし、持っている知識は役に立ちそうだ。
■エンブレスト
メルナキアの父だ。2年前に無許可の人体実験を行い、被検体が暴走して死者を出すという事件を起こした。
これまで何人か、筋肉が異常発達し、強い魔力を得た者たちと出会ってきたが。全員、エンブレストの作成したクスリを服薬していたのだろう。
ずっと行方不明だったが、2年ぶりに首都リヴディンに現れた。謎の技術で巨大騎士人形を持ち去ったが、いったいどこに転送したのか……。
またかつてはアカデミー内で〈月魔の叡智〉という研究室の室長を務めていた。どうやら魔力関連の研究を中心に行っているらしい。
エンブレストはそこで「後天的に魔力を持たせることは可能か」というテーマの研究を続けていた。
エンブレストの他にも、月魔の叡智で彼の研究を手伝っていた者たちも行方不明になっている。おそらくは玖聖会に入り、そこで研究を続けているのだろう。
■ノグとハイス
エンブレストの連れてきた部下……というか、戦闘要員だろう。ハイスは2つの魔力属性を持っていた可能性があるようだ。
魔力属性を複数持つのは、一部の精霊と魔獣のみという話だったが……もし本当にハイスが複数属性を持っていた場合。まちがいなくエンブレストの実験が関係しているだろうな。
■メイフォン
エンブレストの護衛を務めていた女だ。種族は獣人族で、身長167センチのDカップになる。褐色の肌で薄着をしており、踊り子のような見た目をしていた。
だが剣さばきは見事だったな。大きめの曲刀使いだが、しっかりと使いこなせている。
マグナは戦闘中、実は彼女の揺れる胸に気を取られており、戦いに意識を向けきることができていなかった。
おそらくは彼女自身、あえて薄着をしているのだろう。マグナのような男の気を身体に向けさせることで、油断を誘っているのだ。
毒を持っていたという推察もあり、まちがいなく暗殺者だろうな。
そもそも雪国で薄着はどうだと思うのだが……。
■アムラン
アカデミーの修士で、現在も月魔の叡智に所属している。
メルナキアについてはいろいろ思うところもあるみたいだが、久しぶりに現れたエンブレストに利用された。
■六賢者
最年長であったノウゴンが死亡したとみられている。
またエンブレストがノウゴンの後任としてオーパーツに登録されたため、しばらくは5人でクリアヴェールを生み出す〈タルガング〉を維持していくことになる。
・アウローネ
今の六賢者の実質的な取りまとめ役になっている。わたしたちにエンブレストに奪われたもの3つ……古の資料と巨大騎士人形、〈タルガング〉の管理者権限を取り返してほしいと依頼をしてきた。
報酬の前払いには満足している。また報酬の上乗せにも交渉の余地があり、総合的にみてこちらにメリットが大きい依頼だと判断している。
なにせすでに玖聖会とはやりあっているしな。それに玖聖会の持つ知識にはわたしも強い関心がある。
・ブライアン
大図書館の地下一階で騎士たちと共にエンブレストを待ち構えていた。六賢者の中では武闘派らしい。
だが毒であっさり倒され、仲間が死んでいくさまを見続けることとなった。
・レーディア
白精族の女性であり、まだ六賢者になって日が浅いようだ。まじめそうな見た目をしている。
・クアード
獣人であり、賢者という見た目ではない。いかにも粗野な男という感じであり、セクハラ発言も多いようだ。
まぁ六賢者として選出されるに足る理由はあるのだろう。
・マール
マグナは性別がどっちなのか悩んでいたが、普通に白精族の女だ。
身長140センチのAAカップであり、六賢者の中では最も幼い見た目をしている。銀髪ショートカットで、ぶかぶかな帽子は食事中もとらない。
彼女もどういう理由で六賢者となったのか、謎ではあるが……古い本を持っていた点といい、学者としての一面も持っていそうではあった。
口数も少ないが、わたしに強い興味を持っている様子だったし、いずれ直接話す機会もくるだろう。
……こんなところか。次は精霊と縁が深い国、アンバルワーク信仰国に行く予定だ。
精霊はこの星の大きな謎の1つでもある。新たな知見が得られることを期待したい。
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