第19話 リリアベル・レポート 1
わたしの名はリリアベル。グナ・レアディーン帝国製のスーパー美少女AIだ。ここではこれまでわたしの取ってきたデータの一部を公開しようと思う。
【リリアベル陣営】
わたしを中心とするチームだな。帝国への帰還は絶望的ということで、あらためてこの謎の惑星で生きていくことを決意したところだ。
今は自分たちらしく生きていく方法を模索中だが、そのうちなにか目的が生まれてくることを期待したい。
■マグナ・ウォルゼルド
シグニールを与えられたポンコツ艦長だ。お調子者だが、純帝国人なので身体能力だけは異常値をマークしている。
この世界では身体能力強化とかいう、筋肉に対する負荷量とかどうなっているんだという摩訶不思議な力が存在しているが。今のところそれでも、マグナであればなんとか対応はできている。ハルトで同等か……といったところだ。
いざとなればフォトンブレイドもあるし、まぁなんとかなるだろう。本人いわく、運はいい方らしいからな。
もともと異様にポジティブなところがあるが、ここで生きていくにあたり、自分で自分を見放さないという覚悟が決まったようだ。
■リリアベル
わたしだな。ポンコツの下に配属された不幸な美少女AIだ。
本来であれば大艦隊を統括できるキャパシティがあるのだが、ウォルゼルド第七宇宙艦隊総司令の意向で、こんな不幸な目に合うことになった。
マグナに対してはどう見ても宝の持ち腐れだが、今は結果として感謝している。この星には研究対象が無数に存在しているからな。まだまだ飽きることはなさそうだ。
■アハト
帝国の封印領域で開発された戦闘用アンドロイドだな。正式名称はけっこう長いが、縮めてアハトという呼称になっている。
わたしにはよく理解できんが、帝国研究者のロマンが搭載されているらしい。
今の戦闘用アンドロイドのベースとなったオリジナルモデルを改良しただとか、新機軸の動力源を搭載しているだとか、オーバードライブモードが存在しているとか、とにかくそういう類のロマンが多いようだ。
アハトに対してはわたしも保有しているデータがほとんどない。誰が中心となって開発されたのか、どういうコンセプトで完成されたアンドロイドなのか。その一切も不明である。
最大の謎は、どうしてこんなオーバースペックの戦闘用アンドロイドがシグニールに配属されたのか……だが。まぁこれも総司令の意向が働いた結果なのだろう。
今はこの星で、実は最強でした系のムーブをすることがマイブームのようだ。完全にマグナから悪影響を受けたな。
だがこの染まりやすさからみて、おそらく起動したのはごく最近なのだろう。まだまだ若い量子頭脳だ。
■リュイン
風の聖地に咲く花が精霊化を果たした〈フェルン〉だ。この一言だけでツッコミどころが多すぎる。
風の聖地とはなんだ。あと花が精霊化とか意味がわからん。現実にこのような生物がいること自体、よく理解できん。
理解できないものを理解しようと研究を進めるのはわたしの趣味だからな。未知はむしろ歓迎ではあるが。
スキャンしたがヒューマンタイプと同様に内臓や脳がある。この小さな脳でよく思考できているものだ。あと未だにどうやって浮いているのか、その原理も解明できていない。
〈フェルン〉を除く精霊たちの間では、位を上げるためによく狙われているらしいが。現状、このあたりに対する疑問を解消するためのデータは持ち合わせていない。
彼女自身は四聖剣を集めたいと考えている。なにか叶えたい願いでもあるのかもな。
【ノウルクレート王国】
王国があって貴族がいる。わかりやすい封建社会だな。他国に比べると、竜魔族を除く種族がよく入り乱れているようだ。
■レグザ
商人だな。記念すべきこの星の知的生命体第一号だ。いろいろ情報の補完ができたし、王都まで案内してもらえたのも助かったな。
■クザ
レグザの護衛をしていた剣士だ。ギルンの組織に所属しており、わたしたちのことを報告した。マグナによって前歯を折られている。
■ギルン
王都で暴力組織を運営している。暴力に屈した結果、わたしたちのいい財布状態だ。今後も励むといい。あともっと魔道具を寄越せ。
■ハルト
なにやら暗い過去を背負っていそうな29歳の剣士だ。これまで出会ったヒューマンの中では、最もすぐれた身体能力を発揮している。
アハトに敗北したものの、彼女の言葉を受けてなにかに開眼しそうになっているな。比較的まともにコミュニケーションが取れる部類だし、今後もいろいろ教えてくれることを期待したい。
【未開惑星における謎】
この星はあまりに謎がおおい。そもそも異種族が同じ文明圏で生活を共にしている意味がわからん。
またその他にも、他の星では見られない謎があまりに多い。ここではその一部を記していこうと思う。
■魔力
この星の生物が持つ謎の力だ。人種と魔獣の一部が持っている。精霊化を果たしたものと竜魔族だけは全員持っているらしい。
身体能力の強化ができる〈空〉、謎の怪現象を巻き起こす〈月〉、謎物質を具現化できるという〈幻〉、とくに特徴のない〈無〉、いずれにもあてはまらない〈星〉の五属性に分類できるようだ。
リュインの話を聞くぶんには、覚醒する魔力には種族差が見られるようだな。
また魔力持ちは貴族が多いらしく、遺伝の可能性が示唆されている。まだまだ研究が必要な分野だろう。
■精霊化
なんでもこの星の骸や花は、精霊化という現象を引き起こすらしい。他にも地水火風といった自然現象も精霊化するとか。
まだサンプル数もすくなく、データがあまりに不足している。
この星で最初に精霊化を果たしたのが地水火風の4つらしい。それらは今、四大精霊として知られているようだ。
同じ地水火風で、それらとは別に精霊化を果たした個体も多いのだとか。
とにかく今後も要研究だな。
■魔獣
これも謎生物だ。しかし肉は食えるし、どうやら骨や血の一滴にいたるまで、いろいろと使い道の多い生物のようだ。
中には魔力持ちもおり、そうした個体は体内に〈魔晶核〉という石を有している。この大きさや色合いの濃さで、品質が決まるのだとか。
魔道具の素材にもなるらしいし、わたしの方でもなにか活用法を研究したいところではある。
■魔人王
ただの神話の類のおとぎ話かと思っていたが、ハルトの話で変な風向きになってきた。なんでも7つに裂かれて封印されていたらしいが……。各封印がどうなっているのかなどは謎だ。
ただたしかなことは、シロムカ島の封印は既に解かれているということ。その結果、ハルトの妹が一切歳を取っていないということかな。
わたしも興味が出てきたところだ。どこかで資料などまとめられていないものか。
■冒険者
魔獣大陸で魔獣を狩り、稼ぎを作る。そうした者たちの相称だ。なぜ魔獣大陸だけ全域にわたって魔獣が生息しているのか。この辺りも謎だな。
しかし聞くところによると、魔獣大陸には冒険者に特化したインフラも整っているようだ。
各国の思惑が入り乱れていそうな地ではあるが、屈強な冒険者からすれば案外居心地のいい場所なのかもしれない。
魔獣大陸には他にも気になることがあるため、わたしも今から行くことが楽しみである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます