第10話 また来たよ

「……こんばんは」

「レノンちゃん、今日も来てくれたのね」


「先生、」

「レノンちゃん、どうしたの?」


「今日、塾休みだけど、」

「……話、聞くよ」


「……音野先生は、」

「人間関係、怖くないんですか……?」


「私は、ずっと前から人が嫌いです。」


「小学校の時、友達と大喧嘩して、」

「友達に嫌われて、」

「やっぱり嫌でした。」


「怖くなって、人が嫌いになりました。」

「言い返せなかったんです。」


「でも、音野先生は、いいんです。」


「優しさを感じる人だけが、」

「一番いいんです。」


「こんなこと、図々しいとはわかってます。」

「……この前も、友達に話したんです。」


「やっぱり、言い返したほうがいいって。」

「でも、本当に言い返せないんですよ。」


「やっぱり、勇気が足りないんですよね。」

「私が悪いんです。」


「それと同じように、先生も思うんだけどさ、」


「はい」

「復讐とかはしないほうがいいとか言うでしょ?」


「……私は1㎜たりともそう思わない」

「……、」


「「復讐は復讐を生む」みたいな。」

「そんな綺麗事で語るなと思うね。」


「性格とか考え方が、変わってる。」

「もう既に人生捻じ曲げられてる。」


「大切なのは、」

「いじめられた瞬間だけじゃないってこと。」


「その後の人生すべてが変わっちゃう。」

「既におかしくなってる。」


「許せないよ、元には戻らないから」


「音野先生……、」

「同じにしないでほしいよね。」


「全然一緒じゃない。」

「なんでやられた側は、我慢しなきゃいけないんだろうね」


「同じになるからって傷をつけられた側が、」

「いい子にしてなきゃいけないんだろうね」


「そういう綺麗事、嫌い。」


「もし蓮音ちゃんががなにか言われた時、」

「大人たちが「やり返したら一緒だよ」」

「って言っても、私だけは君の味方だよ。」


「レノンちゃんはもう、1人じゃない。」

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