第6話 音野先生

「行ってきます」

「いってらっしゃい」


「って、レノン、傘は?」

「え?」


「今日雨だから!」

「晴れだったって……」


「なに言ってるの⁉」


「土砂降りよ!!」

「え、あ、うん」


「行ってきます」

「はぁ~……いってらっしゃい」


今日は、久々の塾。

先生になにか言われないか、心配だった。


いつも、いつも、いつも。


塾に行けなかったのには、ちゃんと理由があって、


それを、先生が分かってくれていたのが、

一番、一番嬉しかった。

言わなくても、わかってくれた。


前の先生より、全然、優しかった。

「音野先生」


「来たのね、レノンちゃん」

「はい」


「久しぶり」

そう言って、音野先生は笑顔を浮かべた。


「レノンちゃん、まだこれからだよ」

「一緒に、頑張ろうね」


「はい」

「学校は、いつからなの?」

「4月10日から、です」


「そうなのね」

「はい」


『一緒に頑張ろうね』


音野先生は、一緒に頑張ってくれる。

絶対に、私を1人にしないでいてくれる。


私の潤った目が、太陽に反射して、光っていた。

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