第5話 私のCDプレーヤー

今日も、ホトトギスが鳴く声で目を覚ます。

上半身を起こして、時計を見る。


6時35分。

今日から、「音楽のセカイ」に通う。


”オトの神様”という人物を知って、

いつしか、カエデ、ツバキ、レノンは、

毎日、通うようになっていた。


「あ、レノン」

「ツバキちゃん!おはよう」


「うん、おはよう」


「カエデちゃんは?」

「”オトの神様”といるよ」


「わかった」


ツバキは、しっかり者、という印象があって、

いつでも明るい、クラスに1人はいるような子だった。


クラスのムードメーカー的な、そんな存在だった。


ツバキと”オトの神様”の声が聞こえてくる。

「だから、私は何も知らないと言っているだろ」


「どうして?あなたが作ったというのに!!」

「そんなことは一度も言っていない」


「じゃあここの主催者なんじゃないの⁉」


「まあ、間違っているわけではない」

「だったらここの仕組みを教えてよ!!」


「それはできない。」

「どうして!!」


「だから、知らないんだよ」


「どうしたの?」

「レノン……」


「まあ、ここのことについて、詳しく聞いてきたんだよ」


「そこで、何回か今と同じように”音楽のセカイ”に連れてきたら、」


「帰れなくなった奴がいたんだ。」


「え?どういうこと?」


「詳しくは知らないが、」

「バッテリーが切れた、壊れた、親が捨てた、いろいろとあったな」


「それで、ツバキがもしもそうなったらどうするのかと聞いてきたわけだ」


「そっちの世界のことは、私はなに1つとして知らない。」

「だから、解決策も考えることができないんだ。」


「レノンだったら、どうする……?」

「どうするって、なにが?」


「もしも、帰れなくなったら。」

「それは……」


「……帰れなくなったら、飢え死にするだけなんだよ!!」


「おい、落ち着け」

「落ち着いていられるわけないじゃん!!」


「お前は”神様”なんて立場に立って、」

「人の命が無くなることに悲しみを感じないわけ⁉」


「私は、この立場に立ちたくて立っているわけではない。」


「言い訳は見苦しいからやめてよ!!」


「本当だ。」

「音楽のセカイは、受け継がれている。」


「この私、”オトの神様”は、最初から”オトの神様”をしていたわけではない。」


「受け継がなくてはいけなかったから受け継いだだけだ。」


ツバキはツバキで、”オトの神様”はオトの神様で、

2人とも考え方が違った。


「レノン。」

「……。」


「悪かったな。」


理解、できなかった。

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