第2話 朝日と不思議

カーテンを開けると、目に当たった

太陽の光が無駄に眩しかった。


目に突き刺さるような眩しさが

私の視界を遮る。


まだ眠気が覚めていないのに

カーテンを開けてしまった。


今日はきっと雲一つない晴れなんだろう。


「レノン、先生がいるんだけど」

「……、」


一体、昨日のお母さんは

どこへ行ったのだろう。


私のお母さんはいつもそうだ。

次の日になると、また昨日とは違う。


変に優しくなったり、

苛々していたり。

本当に、性格悪いと思う。


「レノンの先生、玄関で待ってるよ」

「なんの先生……、?」


「多分、塾の先生ね」

「音野先生……?」


「お母さんは知らないけど、」

「出てみたら?」


「寒い中待ってくれてるんだから」

「……わかった」


見なくてもわかる。

聞かなくてもわかる。

塾の先生だ。


最近、ずっと塾に行っていなかった。

行けていなかった。


「久しぶりだね、レノンちゃん」

「はい、」


「今日、雪降ってるんだよ」

「え、……」

「やっぱり驚くよね。」


「私もビックリした。」

「え、でも今日晴れ……」


「レノンちゃん?今日は朝から雪だったよ?」

「カーテン開けたら一面雪景色だったでしょう?」


「そうでしたっけ……、?」

「うん、雪じゃなかった?」


「ですよね……、」

「で、話がね、レノンちゃん。」

「はい」


「塾、レノンちゃんに合わなかったかな?」

「別の塾に行く?」

「いや、いいです」


「そう?」

「はい」


レノンが通っている塾は、

ちょっと、いや、だいぶ

レベルの高いところだった。


「毎回必ずテストをやるし、」

「忘れ物もテストに影響する。」


「ちょっと厳しいところなの。」

「それでストレスが溜まっちゃうっていう、」

「そんな子もいるんだよ。」


「だから、レノンちゃんも」

「そうならないように、」

「塾を変えるのが一番いいかなと思って」


確かに、レベルの高い塾は、

レノンに合っていない気もした。


レノンは元々勉強ができる人じゃないし、

頭もよくないから、

塾に行きたいという気持ちがなくなっていた。


行く気力がなくなる。


「しばらく塾に来ていなかったでしょう?」

「だから、行きたくないのかなって思ったの」


今、レノンが行っているような

レベルの高い塾に行くと、


頭がいい子が集まっているみたいで、

テストやワークの点数を

変に期待されるのが一番怖かった。


頭がいいわけじゃないのに、

勉強が得意なわけじゃないのに、

自分だけ背伸びをしている気がする。


頭がいいふりをして、

結局点を取れなかった。


「正直、行きたくないです」

「うん、正直な気持ちが聞けてよかった。」


「あの、先生……、」


「このこと、お母さんには言わないから、」

「大丈夫だよ。」


「安心してね」

「……はい」


先生は、口が堅い人だった。


言わないと言ったら、

本当に言わない人だった。

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