第3話 お掃除動画、バズる

 ---同日、ゆゆの配信ちゃんねる。


 ”え、マジ? あの人ゆゆの倒したモンスターを消したぞ?”

 ”魔石にしたん!? 凄いスキルじゃね?”

 ”スタッフさんかな? 見たことない顔だけど”

 ”なんか掃除してるみたいやね”

 ”やっぱ、ゆゆのスタッフはちゃんとしてるな~”

 ”舞台裏配信すこすこ”


「ゆゆに付き合ってくれてありがとう」

「次は無害な動物に生まれ変われよ?」


 ”むっちゃいい人だ!!”×200



 ---同日夜、有名SNSポイッター。


【朗報】迷惑配信者が汚したダンジョンを人知れず掃除する神現る

 荒れる配信界隈の救世主か?

 ■動画リンク■

 海沢カレン@ダンジョンまとめ強化中☑ @karen_official

 💬3,291 ↑↓4.5万 ♡17万 View 783.2万


 うまたろう@umauma

 返信先: @karen_officialさん

 ゆゆの配信見てました。

 モンスターも弔うとか良い人すぎ。


 みんみん@min29281

 返信先: @karen_officialさん

 取り上げてもらってありがとうございます!

 いい動画ですよね!


 わかち@wakachan88273

 返信先: @karen_officialさん

 ちょっとカッコいいかも。


 さいが@sai_dandan123

 返信先: @karen_officialさん

 ゆゆの仕込みだろwwww


 じゅん@jun11214

 返信先: @sai_dandan123さん

 迷惑配信者さんちーっすwwww

 自分らに需要が無いと理解しろよ。


 週間ダンジョンマガジン公式@ damaga_Official☑

 返信先: @karen_officialさん

 この男性に取材を申し込みたいのですが情報をお持ちでしょうか?

 DMでやり取りお願いします。


 ゆたか@ danchuYutakaLv123☑

 彼のスキルは珍しいな。

 正直Sランクレベル。


 わかち@wakachan88273

 返信先: @danchuMasaLv88さん

 世界ランカー降臨!

 マジですか!?


 ---翌日朝、ユウナ自宅。


「おぅふ!?」


 パジャマ姿のままトーストをかじっていたユウナは、スマホを見て驚きの余り固まってしまう。


「頼むよ兄貴ぃ……」


 どうやら自分が退出してからも5分ほど配信が続いていたらしく、ゆゆ公式ちゃんねるから届く通知がものすごい事になっていた。


「うぅ、カラ絵なんて最悪だよ……」


 自分で切ることも出来たのだ。

 配信者としてあるまじきミスである。


「ヤバそうなものは映ってないよね……?」


 素に戻った自分が映ったりはしていなさそうで、そこはひとまず安心だ。

 ”キャライメージ”を保つのも配信者の大事な仕事である。


「SNSは大丈夫かな……」


 心配になったユウナは国民的SNSであるポイッターを開く。


「って、切り抜き動画がバズってるぅ!?」


 トレンドに「#ゆゆ配信切り抜き」というタグがあるだけでなく、ゴシップネタを多く扱うインフルエンサーに切り抜き動画が取り上げられてしまったようだ。


【朗報】迷惑配信者が汚したダンジョンを人知れず掃除する神現る


 というキャプションを見る限り、悪い取り上げ方はしてないようだけど。


 海沢カレンがアップした記事を開くと、好意的な反応が殆どだ。


「ほっ……って、どんな動画なのかな?」


 安心するとバズった動画の内容が気になる。

 ユウナはアップされていた動画をクリックする。


「……え?」


 そこには自分が倒したモンスターを弔い、魔石に昇華させる若い男性の姿が。


『ゆゆに付き合ってくれてありがとう』

『次は無害な動物に生まれ変われよ?』


 聞き覚えのある声が聞こえ、男性がゆっくりとカメラの方を振り返る。


「って!? タクミおにいちゃん!?!?」


 がたん!


 ずっと探していた憧れの人の姿を見つけて、思わず立ち上がったユウナはしたたかに膝をテーブルの裏にぶつけたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る