僕はもう
僕はもう心が汚れてるから。
僕はろくでもない人間。
きれいな人だと思いたい。
工藤歩武が生きていてくれたら、僕は少しだけ報われる気がする。
恐怖で震える僕の肩をヒロが触る。
「大丈夫さ」
僕の肩を触るヒロの手も震えていた。
「この後どうすればいい…?」
頭が真っ白だ。林間学校での記憶は頭から消えてしまった。
「俺たちは、できることをしなくちゃ!」
ヒロは工藤歩武を横にする。口から泡が垂れてくる。僕は慌てて、ポケットの中のハンカチを工藤歩の口に当ててふく。
救急車が長く感じる。
「クックッお前は人殺し」
「お前が死ねばいい」
「こいつの代わりに死ねばいい」
僕へ向けられたたくさんの罵倒。
僕がシスターや、シスターを御守りする存在に向けた罵倒と同等のものだ。毎日、毎日、僕の中で鳴り響いて、僕を穢していく。こんな大事な時にだって聞こえてくる。
『工藤歩が死んだら、僕は本当に人殺しかもしれないね』と、心の中で言う。
僕の返答にマァは、一回黙る。だけど、すぐにたくさんの罵声がまた聞こえる。
人間は、言い訳をしたがる。僕がこうなったのは、マァのせい。僕がこうなったのは、シスターのせい。何も知らなかったら、良かったのにと、思うことばかりだ。
僕だって分かってる。僕がこうなったのは、誰のせいでもなく、僕自身のせいなんだって。
僕と工藤歩武は、違う。だけど、どこかで僕に重ねてしまう。工藤歩に取り憑いた獣は、工藤歩の身体の中にどんどん入ろうとしている。工藤歩を
僕は、もう少し、キミを助けるために頑張りたい。
だけど、だけど、駄目かもしれない。
僕が諦めかけた時、救急隊員が来た。
僕の目はもう、涙でいっぱいだった。
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