第52話 人は、本来、素人作家の書いた小説は読まないものだ<3>



 前回、合評会が終わったあとで、同人誌を用済みとばかりにゴミ箱に投げ捨てた事件のことを書きましたが。


 その中で、「〇〇さん、今日の同人誌、余分に持っていたら、一冊、売ってくれる?」というセリフがありまして。


「仲間なんだから、定価五百円(当時の値段はそれくらいだったと思います。30年昔の話です)の雑誌くらいただであげたらいいのに。売りつける明千香さんのケチ」


 と、思われた皆さま。

 実を言うと、当時の私の立場は発行人でした。


 会計も引き受けていましたので、仲間内であれ、1冊でも売って在庫を減らすことは責務でもあったのです。その方もそれを知っていてのセリフです。


 ところで、合評会に来るのに同人誌を忘れたというのを聞いて、「こいつ、同人誌を読んでいないだろう。合評会での感想は、その場しのぎの作文だな」と、私は思いました。


 2時間の合評会で20~30人は集まりましたから、まあそういう裏技も出来たといえば出来たのです。


 長い同人誌歴の中では、私も何度かやりました。(笑)

 ほんと、どうしても読めない、読みたくないという作品もたまにはあるものです。


 そうそう、このカクヨムでも、ご自分のページに誘導するために、ハートをつけて、「絶対、読んでいないだろう!」という感想を書く方がおられるとか。


 猛者になると、「面白いです」「頑張ってください」「続きを楽しみにしています」など、当たり障りのない感想を、コピペして回るという方もおられるそうですよ。


 


 ところで、『人は、本来、素人作家の書いた小説は読まないものだ』なんていう物騒な題をつけたので、「明千香さんって、人の作品なんて読まないのだろう」と思われそうですが。


 いえいえ、私は、カクヨムに掲載されている作品、けっこう読むほうだと思います。


 それも時間をかけてかなり丁寧に。

 書けそうだったら、レビューも残しています。


 確かに、素人作家さまの書いた小説を読むのは、純文であれエンタメであれラノベであれ、難行苦行ではあるのですが。


 そして、よい作品を書きたいと思うのであれば、すでに評価の高いプロ作家の作品を読むべきなのでしょうが。


 でも、私、カクヨム掲載の作品を読んでいます。

 そして、まるでストーカーのように、その方の作品を漁ってしまう悪癖丸出しなんていうことになります。


 私はたぶん、『作家読み』するタイプなんだと思います。


 作家さまに興味が湧いてきたから。

 作家さまのことが好きになってしまったから。

 そして、働きながら子育てしながら小説を書いていらっしゃる作家さまを、読むことで応援したいから。


 最後の4行、書いていて、我ながら恥ずかしくなりました。

 70歳過ぎているから、書けるセリフです……。



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