3-10

帝国が滅んでいる!?

いったいどういう事だ。


確かに国が亡ぶ可能性はゼロというわけではない。

何かの道を違えていれば、公国と王国の関係も全く逆になっていたはずだ。

例えば王国から勇者の戦力を一切逃すことなく軍事利用し、公国との戦争で使えていれば公国は勇者の大きな力に負けて国が滅んでいた可能性は否めない。


だが事前情報によればレプラコーン帝国は軍事力を背景にしつつ拡大した国家のはずだ。

確かに武力だけ国を成り立たせるのは簡単なことでは無いのだろう。

しかし、それだけに純粋な力を崩すのは容易では無いはずだ。


疑問だらけの情報に戸惑っていると、そのことを察したのかアンジェリカが教えてくれた。


「レプラコーン帝国はあなた達を軍事利用しようと考えた国と同じように、召喚魔法を用いて悪魔を召喚したのよ。

そもそも召喚魔法は、別の世界に繋げて異なる種族を呼び出すことのできる魔法よ。

その際召喚する種族を思い浮かべたり、それに該当するような願いを込めることによって、その種族を呼び出すことができるの。

今回レプラコーン帝国は圧倒的な力を持つという伝承が残っていた悪魔の呼び出しをしたのよ。」


まさか・・・


「だけど私たち悪魔は何かの上下関係を決めるときに純粋な力での実力勝負になりがちなのよ。だから私たちが呼び出された場合、何かの対価を払うか、純粋に私達よりも力があることを証明しなくてはいけない。

それをせずに無理に従わせようとすれば、待っている未来は当然破滅よ」


ああ・・・

やっぱりそういうことか・・

帝国は悪魔を召喚し、上から目線でその力を利用しようと考えたわけだ。

しかし対価を払うつもりが無ければ、力を示すつもりもなかったのだろう。

そのまま悪魔たちの不興を買って滅んだというわけか。


「それだけじゃなくて、召喚魔法で召喚される者達っていうのは、召喚する者達の心の持ちように影響されやすい。今回帝国は残虐な思想を元に召喚魔法で悪魔を呼び出した。したがって呼び出された悪魔たちは比較的穏便な思想を持つ者達ではなく、積極的に殺戮の限りを尽くそうとする者たちを呼び出すことになったのよ」


ということは多分だが、彼女は比較的穏便な思想を抱いているのだろう。

でなければこうして対話などできるはずがない。

そしてその彼女たちと対をなす一派、あるいはそのグループを召喚したのだろう。

そのうえで悪魔たちの特性を考えれば、彼らの求める物を用意できなかった者達が辿る末路は少し考えれば簡単にわかる。


「それじゃあ召喚魔法の起源を調べることは・・・」

「当然無理よ。なんせ呼び出したのが積極的に殺戮しようっていう危険な連中だからね。人は一人残らず殺されているし、その過程でありとあらゆる建造物も破壊された。当然、残されていた資料なども丸ごと焼き尽くされたでしょうね。

だから召喚魔法に関して調べるのは不可能よ。

普通ならね・・・」


「普通なら?」

「今回呼び出したの悪魔であるということが特殊な事情に繋がってるの。

悪魔に関する伝承が残ってるという事は、過去に悪魔があの国に現れたことがあるということよ。

私達の大昔の先祖が気まぐれに世界と世界の間を旅して、偶然中に入った国がレプラコーン帝国だった。

そして気まぐれで召喚魔法というものを教えた。

これが真実よ」


「ということはアンジェリカさんも召喚魔法のことを教えられる?」

「期待に沿えなくて悪いけれど、私は無理。

私ができるのは使い方そのものであって、細かい調整とかは知らないもの。

だけど私の婚約者のアレクシスなら多分細かいところまで知ってると思うわ」


「そのアレクシスさん?に会うことはできますか?」

「それも残念だけど無理よ。さっきも説明したけど、彼は今権力争いの中心地点にいる。

もちろん比較的穏便な思想を抱いた貴族悪魔ではあるけれどね。

でもそれだけに下手に動けばそれだけで殺されかねないのよ」


「では逆に聞きますが、その権力争いの事案に対して僕たちがアレクシスさんに協力すれば召喚魔法について教えていただくことはできますか?」

「・・・・本気?」


「確かに今の僕たちの装備であれば、真っ向から戦うだけの力を持っているとは言えないでしょう。

しかし本気で装備を整えれば、これ以上の装備も揃えることもできますし、もし僕の特殊な力が進化していれば、今とは次元の違う装備を手に入れることができる可能性があります」

「・・・そう・・なら、お願いするわ。

正直最近の悪魔というのは過激な思想を持った者達が多いのよ。現状私達穏健派は数で不利に立たされているのよ。

過激な思想を持っているのは若い悪魔が多い。数は多いけど元々の爵位が低かったりするから、数は少ないけど爵位の高い悪魔たちが何とか抑えている状況だけど・・

それもいつまでも持つのか分からない状況よ。」


「そうなんですね。それにそこにはもう一つの可能性があると思います。」

「可能性?」


「悪魔は実力主義の面が強いのでしょう?なら僕たちがそこで力を示せば、交渉の余地があるのでは?」

「フフッ・・・それもそうね。なら、お願いするわ。」





そうして僕たちは悪魔との戦争に入ることになったのだった。

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