3-7

夜が明けかかる。

もともと選抜されていた僕たち4人はアイテムボックスから取り出したハン〇ィーに搭乗する。


夜明けを出発に選んだのは、夜の視界が完全に悪い状態でライトを煌々と点けては『こちらに気づいてください』と言っているようなものだし、

日中の真昼間であれば日の光が多い分、夜にライトをつけるよりはマシとはいえ、やっぱり気づかれやすい。


ライトを点けずに、しかし視界をある程度確保した状態で進むためには夜明けか夕暮れが丁度いいとの判断だ。

服は服屋になぜか迷彩色の服もあったためそちらを購入して全員が着用している。


何故夕暮れを選ばなかったのかというと、夜になってしまえば暗視スコープでもない限りは夜の行動は難しい。

こちらの存在に相手が気づきにくいというメリットはあるが、最接近するさいは車から降りて移動することになる。

いくら漁村とはいえ破壊の限りを尽くされたという情報もあるため、その状況下ではしっかりとした足場の確保がされているとは限らない。


足場の確保・・・という環境面に注意しながら直接的な力の塊に注意しながらというのはリスクにリスクを重ねる行為ということで出発は夜明けに設定されたわけだ。


現在のところ武器ショップに暗視スコープは無かった。

まあ初級ポーションや聖草然り・・・ショッピングセンターがアップグレードされれば関連商品という事で仕入れができるようになるかもしれないが・・・

それに正直に言えば車屋にも期待している。

もしかしたらそのうち戦車とかそのあたりも仕入れることができるようになるかもしれないからだ。


まあ砲弾とかどうするんだろうとか思うところはあるけれど、そこは銃器ショップのアップグレードがあればもしかしたら何とかなるかもしれないな。



などという取り留めのないことを考えながら僕たちは出発した。

流石に廃棄された漁村に至る道ということだけあって人気は一切感じられない。

そうして夜が完全に開けるよりも前に僕たちは到着した。

車を茂みのあたりに止めてここからは徒歩移動だ。


そうしてさらに30分ほど歩く。

ちなみにここに徒歩移動までしているのは愛理と涼音と僕の3人だけだ。

明美は車で待機中。

ホームセンターには家庭用の無線機も販売されていた。

その無線機を明美に持たせている。


他の3名にも持たせており、イヤホンマイクをつなげる形で装備している。

イヤホンマイクを繋げないと相手からの声が普通に聞こえてしまうため、もし最接近した時にそうなれば致命的なミスとなる。

なのでなるべく音が漏れないようにするために、そういうやり方を選んだわけだ。


何か緊急退避しなくてはいけない事案が発生した場合は、戦闘ありきとなる可能性があるため容赦なく銃を撃つ。

その音源を頼りに明美が回収に急行する手筈になっている。


そして漁村と場所に到着した。

なぜ思われるのかって?


それは簡単だ。

正直言えばただの瓦礫の山となっているからだ。

漁村としての面影なんて一切感じない。


潮の香りはするため海が近いことはなんとなくわかる。

しかし建物らしい建物なんか存在せずただの瓦礫の山だ。

茂みに身を隠しながら双眼鏡を構えて遠方もくまなく捜索する。

言うまでもないが、こちらもホームセンターで購入したものだ。


キャンプやアウトドアの延長線上にあるクライミングなどは、実は命の危険が伴うものだ。

そのため基本1人でやることは少ない。

それに伴って仲間と連絡が取れる無線機や、遠方をしっかりと確認できる双眼鏡も売られていた。


そうして探していたが全くもって異形の人型など見当たらない。

そろそろ茂みから出てもう少し接近しようかと考えていると、


――ドガァァァン!!!―――


大きな爆発音が聞こえてくる。

それも1回や2回の話じゃない。


―――もしや、見つかったのか!?―――


と心配をするが、僕の状況も見ていたのだろう。

《落ち着いて・・私たちが見つかったわけじゃないわ》

と愛理からの無線が飛んでくる。


しかしこの音はどう考えても単純に破壊の力を振りまいているだけの音では無い。

誰かと誰かが闘っている音だ。

そして音源の方に双眼鏡を向けると・・


異形の人型が2つあった・・


いや2人いるというべきなのだろうか・・・

あれを人と称していいのかが分からない。


1人は男性のように思える。

隆々とした胸筋が見えていることからそう判断した。

もう1人は女性のように思える。

こちらは胸に2つの膨らみが見えたからだ。


《男女なのかしらね・・・?が、戦っているように見えるわね》

愛理もそう判断したようだ。


涼音が質問すると車で待機しているはずの明美が無線で答える。

《どうするの?どっちかに助太刀する?》

《待って。どちらも敵だったらどうするの?》


《じゃあどうするの?両方を同時に敵にして、一度に相手にする余力は無いわよ?》

《・・・・このまま戦いを見守ってどちらが不利になったら、優勢側を攻撃てちょうだい》


????

どういうことだろうと思って僕は聞いてみることにした

《優勢側を攻撃するってなんで?普通は不利な方を殲滅したほうが楽になるんじゃない?》

《見ているわけでは無いから詳しいことは分からないけど、車で待機している私でも爆発音は聞こえてくるわ。

だとすればその攻撃力ははっきり言ってマズイわ。この際だからどちらか片方を味方につけられる可能性を残した方が良いわ。

不利な方を殲滅したところで元々が優勢だった存在よ?助けたとは考えてくれるか分からないわ》


《そうか・・・でも不利になっている方に加担すれば・・》

《そう・・加勢して助けてくれたのだと考えてくれる可能性が見いだせる

もちろんそのあと必ずしも友好的にいけるとは限らないわ。でも助けただけあってこの限りは見逃してくれるようにもなるかもしれないし、交渉の余地はあると思う》


《わかった。それならその際の初手は僕がやるよ。ちょうど中遠距離向けの兵装だしね》

今度は愛理が答える

《お願いするわ。私は近距離向けの兵装だし、涼音も中距離迄がいいところで遠距離には向いてないアサルトライフルだからね》




そうして僕たちは異形の人型の戦闘を隠れながら遠目に眺めて、均衡が崩れるのを待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る