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あれからというもの射撃訓練を始め、トレーニングに励んだ。


理由は言うまでもなく、漁村の調査に向けてだ。

幸いにもあれ以降というもの他に近隣の村や町が滅ぼされたという情報は入っていない。

しかし偵察に出撃した者たちも異形の人型と戦闘になったが成すすべもなく、圧倒的な力の前に無残に殺されたそうだ。


そのため偵察隊を出撃させても被害を大きくしてしまうため、今のところは防衛ラインを設定したうえで、こちらからは立ち入ることはせず。

周辺の街や村にも立ち入り禁止区域として設定したことを通達している。


もちろん侵入して何か罰則があるわけでは無いが、死んでも一切責任はとりませんよ?

みたいな告知だ。

一部腕に自信のある冒険者が向かったそうだが、こちらも大半が惨殺されてかろうじて生き延びた者によって、冒険者ギルドに対してもその情報が伝わったとのこと。

いまではそんな腕試しみたいなことをする冒険者はいなくなったそうだ。


公爵様に対しては力をつけて準備が整ったら漁村に偵察に行って情報を集められるか試すことを伝えている。

最初は怒られはしたが、最終的に認めてくれた。


とはいえ時期も冬になっており、偵察を決めた頃合いからちょうど雪も降り始めていた。

本格化すれば移動が困難になる。

もちろん、自動車というこの世界においては非常識な物も扱えるので、いざとなればなんとかなるだろう。

しかしそれは『いざ』という時の話であり、初めからそれを当てにしては危険だ。

それゆえ、偵察は冬を過ぎて雪が解けたころ。


つまり日本にいたころで言う、桜の季節になってからという事になった。

この世界には桜というものは無いらしいから、普通に春になってからというだけの話でもあるが・・・


なお愛美に関してはこの間、訓練も中断することになった。

当たり前ではあるが、妊娠が本格化し、悪阻なども酷くなってきたためである。

春にもなると流石にお腹が目立ち始めており、保護区画では珍しい目で見られてもいる。

まあ日本にいたころの価値観に引きずられるなら、高校2年生の春で妊娠した女子生徒という扱いだ。

当然のことながら目立ちもする。


またこれに伴い、3年生だった先輩たちも徐々に学生の集団から離れ始めた。

具体的には冒険者活動を積極的に行う生徒たちが増えてきている。

愛理達は僕のハーレムでもあるため、他の生徒たちとは行動が少し異なっている。

その間にも選抜は続いており、最初は50人程度だったのが、現在は10倍にも該当する500人程度になっている。


そのため保護区画は既に半数の生徒が拳銃などの武器を常時持った状態で行動している。

残り半数は信用が得られていないか、あるいはそもそも自衛ですら武器を頑なに持ちたくないと言い張っている平和主義の生徒たちだ。


もちろんその生徒たちも戦うことを否定しただけであって、経済や知識を広めることによって社会進出を目指しつつある。



その間に僕の方でもスキルと日本との関連性を調べはし続けたがこれといって成果は無かった。

やはり、召喚魔法について調べるしかないのだろう。


しかしこの召喚魔法については現時点でリーチェから追加情報があった。


どうにも召喚魔法はあらゆる次元、あらゆる世界を繋げることができるものらしい。

そのため召喚できる者は決して人間だけとは限らないそうだ。

リーチェたちは自分達でも制御できる範囲として人間を選択したそうだ。

実際には飼い犬に手をかまれている以上制御しきれなかったわけだが。


そこから今回の異形の人型は帝国が召喚魔法を用いて呼び出したものでは無いか?との憶測もたてられた。

同時に村人全員を殺そうとするならば、帝国は召喚した異形の人型によって滅んでいる可能性があるという考えも出てきた。



そして雪が融け、春が来た。

いつもであれば新しい年度なだけあって微笑ましい気持ちになるところであるが、今年はそうはいかなかった。

すでに生徒たち全員を銃で武装する理由に関しても大まかであるが説明がなされている。

そのためこれは戦争準備だったのだ。


そしてその戦争の準備が終わり本格的に行動にでるとあり、僕たちの雰囲気はそれまでの日常よりも殺伐としたものになっている。


今回の偵察では、その近隣の村に生徒たちが100人ほどアサルトライフルやサブマシンガンで武装したうえで待機することになっている。

またこの待機メンバーには元副会長である茜も含まれている。


というのも茜にも親愛の絆・改が繋がっているため、僕・愛理・明美・涼音の4人で偵察を行うことにして、いざとなれば親愛の絆・改で4人とも茜の元へ緊急避難する形をとることになっている。


それでも近隣の村まで追いかけてきた時は、100人の生徒+軍用車両としてハン〇ィー、そして車には機関銃を取り付けている。

もちろんこの兵装自体は僕たち4人も使うが、それは近くに接近するまでの話だ。

接近して走行に伴う音が響けば問答無用で殺されてしまう危険を考慮してのことだ。



そうして僕たちはいよいよ、滅んでしまった旧漁村へと出発したのであった。

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