3-2

僕の疑問を自分達と同じと思ったのか違った質問を愛理は返した。


「神聖レプラコーン帝国?なにその国は?

一応この世界の・・・というかこの大陸の地図を見てみたのだけれど、そんな国はなかったはずよ?」


「レプラコーン帝国は海を挟んだ向こうの大陸にある巨大国家だ。

軍事国家であり武力で拡大し続けたため奴隷に対する扱いの酷さは、私がやってきたことの非ではない

一応言っておくと別に自分の罪の免罪符にしたいわけではないから、そこは勘違いするなよ?

ただ緩みきった気持ちで行くのは危険だという話だ」


「それで?その危険な国家になぜ行かなくてはいけないの?」


「答えは簡単で私たちが使った勇者召喚は、もともと帝国によってもたらされた魔法だからだ」


「「「「「「「「!?」」」」」」」」


これは・・・

とんでもない情報だ。

僕は、僕のエゴでリーチェを生かすという道を選んだ。


しかしここにきて、リーチェの持っていた情報が一気に重要性を増した。

加えて帝国の情報も僅かとは言えど辺境伯様から出ている。


リスクはかなり高い。

下手をすれば僕たちは漁村と同じ運命を辿ることになるはずだ。

しかし、そこに挑むだけのリターンも十分にある案件だ。

僕は自分の意思を伝えることにした。


「みんな、僕はこの漁村が滅んだという一件に対して調査してみようと思う」

「なぜ?」

警戒心を持った明美が聞いてくる。


「公爵様と面会した後に、辺境伯様とも面会をしたんだけど・・・

その時にわずかとはいえど、神聖レプラコーン帝国の名前が出ていたんだ。

最初、帝国が攻め入ってきたのか?っていう憶測が出たんだけど、それは違うんじゃないかって推論になったよ」


「なぜ違うと判断したの?」


「今回公爵様にもたらされた情報の中に、異形の人型によって漁村が滅ぼされたっていう情報があったんだ。

流石に人間と異形の人型を見間違えることはないんじゃないか?ってことで帝国の線は薄いんじゃないかって結論には至ったんだけれども・・・」


「なるほどね。蓮司はそれでも神聖レプラコーン帝国の名前と、召喚魔法の調査の中でリーチェからその名前が出てきたこと。そして今回の事案が無関係とは思えないってことね?」


無言で頷いた。


「・・・・・・そうね。確かにその情報がなければ今回の事案の調査は正直言って危険だけがあってやる気は起きなかったけれど、他に取っ掛かりが無い以上それにすがる他なさそうね。

そうなると急いでメンバーの選抜と銃器の訓練を行わなくてはいけないわね」


結論が出た僕は早速行動に出ることにした。

といっても今回働きかける相手は公爵様ではなく辺境伯様だ。

どっちみ辺境伯様から公爵様へと情報が筒抜けにはなるだろうけど・・・


もともと保護区画そのものも辺境伯領の外れに位置する場所にある。

その保護区画から近すぎても問題となる可能性が見込まれるが、反面遠すぎても問題になる可能性がある。

というのも今回必要性を感じたのが訓練施設。


所謂射撃場だ。


銃というものが持つだけで大きな力を得られることは日本が存在していたあの世界出身の者達であれば中学生にもなれば誰でも理解できるだろう。

だが、銃はその反動制御などを含めて、扱いはかなり慎重を要する。


実際問題何かあれば直ぐに射撃するイメージのあるアメリカとは違い、

日本の場合警察官でも射撃を躊躇う傾向がある。


というのもそれだけ大きな力を簡単に行使できるとなると、まず市民の反発がとても強いというのが1点。

そしてそのほかに、拳銃の弾ですら骨に当たらなければ人間の体など簡単に貫通してしまうことなどから本来撃ちたいと考えた標的以外にも命中してしまう懸念があったことなどがあげられる。


15年近く前に大通りで無差別に殺傷する事件が起きた際にも居合わせた警察官が拳銃を向けて威嚇をするということがあったが、なぜすぐに撃とうとしなかったかというと、この2次被害・・・といって良いのか分からないが、

貫通した弾が全く無関係の市民を傷つけることなどを警戒してのことだったはずだ。



それはともかくとしておいて、とにかく銃は確かに持つだけで大きな力となるが、

その力をしっかりと使いこなすためには訓練が必要になる。

そのための射撃場を作るために辺境伯様へと働きかけることにした。


結論を言えば射撃場は直ぐ用意できた。

というのも基本的に最初は僕たちと元生徒会によって選抜というか信用された一部の生徒たちのみが扱う施設だ。

それだけに、物品は基本的に僕たちのアイテムボックス内で保管する運びになった。


そうなれば後は銃弾を貫通させないための設備と、周辺物品の保管や衛生環境が整えば簡単に運用ができる。



そうして僕たちは呼び出された生徒たちと共に射撃訓練に臨むために、集まるのであった。

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