幕章-5

屋敷へ帰宅した僕は皆に新しく解放されたテナントについて説明した。


「銃器ショップ・・・といって良いのかしらね?

そんなものまで解放されるとは、本当にショッピングセンターなのかも怪しくなってきたわね」

と愛理は言う。


確かにそうだ。

スキル自体も当人の想いや、努力によって解放されてきた。

ならば『異世界のショッピングセンター』というスキル自体も、その状況に合わせて変化あるいは進化してもおかしくは無いのかもしれない。


僕のスキルについて話し合いが行われているわけだが、この場にいるのは僕のハーレムメンバーに愛美を欠いた状態である。

なんとも女性密度が高く微妙に・・・いや正直気まずい。

なんせ周りにいるのが美女・美少女ばかりだ。


この世界に来てからがどうなのか・・もはや自己評価が下しにくい状態であるためいまいち自分自身のことについては分からないが、

少なくとも日本にいたころであれば間違いなくクラスの片隅にいるモブ生徒の立ち位置だったわけだし。


そうなると当然こんな美女・美少女が僕に視線を向けたり、それこそわざわざ近づいてきたりだとかそういうことは無いはずなので、耐性がないのは許してほしい。


なお、愛美に関してはどうにも最近継続的に体調が良くないとのことだ。

それゆえ自室で休んでいる。

時折夜這いを仕掛けようとすることもあったが、そこはあからさまに体調が悪いのが・・・鈍感評価の僕にすらわかる状態であったため、部屋に帰って休むように言った。


まぁそこで愛理や明美が煽ったりして意固地になったりした一幕もあったりしたのだが。



そんなことを考えていると、茜から発言があった。

「あの、本当にそれだけでしょうか・・・・?」


前髪で目が見えにくいので表情がいまいちわからない。

性格的には絵里奈と似ていて引っ込み思案と言ったところ。

ただ絵里奈は基本引っ込み思案でも一応顔が見えるようにしているのでそれ相応には表情が分かるのだが、

茜の場合は引っ込み思案なうえにその容姿だ。ゆえに表情が分かりにくい。


「どういう意味かしら?」

明美が疑問に思って質問する。


「え?いや・・その・・・・」

責められたと勘違いしたのか急に怯えだしている。

というか明美もちょっと言い方がきつい気がするのは気のせいだろうか?

もしかして昨日の夜のことに嫉妬しているのか・・・?


「ああ・・・ごめんなさい。責めているわけでは無いのよ。本当にどういう意味か知りたいだけよ・・・・・・・・・・・・・・・・・昨晩のことは別だけど?」


あ~、やっぱりちょっと気にしていたのか。

昨晩は珍しく茜が真っ先に飛びついてきたからな・・・

なんでも周りがプロポーション抜群ゆえに、今まで極力隠そうとした自分の体型をさらに女性らしくしたいと考えて、絵里奈と同様にヒーレニカのポーションを飲んだらしかった。


そして案の定、発情。

抑えきれずに他を押しのけての一番手を強奪したようだ。

まぁハーレム古参メンバーからすれば面白くないのだろう。


「えっと、蓮司君が今までスキルやテナントの解放が行われてきたのは確かに彼の、この世界における貢献度がネックになっています。

ですが、解放されてきたテナントやスキルは、状況に何らかの変化が起きた時期と同期しています。

本来であれば日常的に使えるテナントはまだあるはず。なのにここへきていきなり銃器ショップです」


その答えに対して今度は涼音が反応する。

というか胸の下で腕を組んでその大きなものを強調するのをやめていただけないだろうか・・・

僕も彼女らに汚染されて人目のないところなら時間問わずに盛ってしまうようになったのだから。

そんな物を見せられると我慢できる自信がありません・・・


「確かに・・・そうよね。

つまり茜はこのタイミングで・・と言って良いのかは分からないけれど、平穏な日常的なテナントが解放されるのではなく、明らかに戦いを前提とした。

それこそ今までの蓮司君が使えるテナントでは考えられないものが解放されたことに対して、何かしらの意味があるのではないか?・・・と考えているという事よね?」


「はい・・・」

茜が自信なさげに頷く。


確かに言われてみればそうだ。

スタンピードの直前にポーション作成に必要な花屋・・・というか薬草屋が解放されたり、

公爵様との付き合いが出始めたときに長距離の移動に適した車が解放されたり、

生徒たちの保護を開始する直前にホームセンターが解放されたりと・・・


解放されるテナントの順番に統一性が無いと思う反面、

なんともご都合主義と言わんばかりに必要なものが揃えられる環境が整うのだろうか?

もしかしたら銃器ショップが解放されたのは、さらなる脅威に備える必要があったため?


愛理も意見を述べる。

「その考え通りなのだとしたら、かなり危険な状態よ?

なんせ今までの戦いというのはあくまでも、私たちが日本にいたころに日常的に使っている、あるいは入手できるものを組み合わせて、武器として使っているだけだったからね。

その理論だと、銃器ショップを解放しなくてはいけないような何かが起き始めようとしているという事になるわ」




ならば一体何が起きようとしているのだろうか。

言い知れぬ不安に襲われながらも話し合いは続いた。

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