2-4-11
戦争が一応、終結した。
それにより大きな変化がいくつかあった。
変化その1。
公国軍は王城へと攻め入り、難なく制圧したそうだ。
流石に負傷者が出なかったわけでは無いが、僕が拠出している大量の回復ポーションにより結果的に死者はもちろんのこと、負傷者も出なかったことになった。
対する王国軍も死者は想定していた数よりもずっと少ない形になったそうだ。
負傷者は最初多数出ていたらしいが、こちらも捕縛後に回復ポーションを(無理やり)飲んだ形になり、結果的に死者だけが少数出る形となった。
この背景には、その回復ポーションが絡んでいる。
考えてみてほしい。
決死の思いで敵に突撃しても直ぐに大量のポーションで回復してくる敵軍が目の前にいたらどう思うか。
もはや絶望しかないだろう。
結果的に戦闘は最初のうちだけで、あとは無血開城だったそうだ。
そのため王城に立てこもっていた戦争賛成派の貴族は、本来の目的である王族もろとも全員捕縛される形になった。
変化その2。
保護区画ではやはり疑われていた生徒たちが反乱を起こしたそうだ。
といっても彼らの反乱は僕たちサイドから見たら誰しもが予測していたことであり、同時に状況により否応なしに同調しなくてはいけなくなっていた生徒と、積極的に人を貶そうと動いていた生徒たちを判別する絶好の機会と捉えていた。
そして別の意味合いでの反乱も起きていた。
それは同調しなくてはいけなくなっていた生徒たちだ。
同調しなくては自分自身の身が危ないことを察知していた為の行動であるということは、
同時に安全がある程度保障されているのであれば、自分たちの想い・・・すなわち平和路線に向けた行動をするのが当たり前になった生徒たちだ。
彼らは反乱を企てそれに積極的に同調している者達に対するスパイ活動を行い、僕たち側に積極的に情報をもらしていた。
全体の保護観察処分を受けた生徒がおおむね100人程度。
その中の3割がスパイ活動を行っていた。
そのためどこにいてもスパイの目と耳が存在していた為、全ての情報が筒抜けになっていた。
保護区画に残っていたヒーレニカとレミリアにより囮用の車が用意された。
といっても最初からパンクさせられており動けなくなることが前提になるように仕組まれた車が・・・
結果まんまと策にはまった生徒たちは、あっけなく御用となった。
こちらは後日公国に引き渡し、戦犯として、公国の処分に任せる予定となる。
といっても具体的に人を1人でも殺しているわけでは無いので、あまり重い処分は期待できなさそうではあるが。
変化その3。
勇也君と戦った末の重川は、左腕を切り飛ばされた状態でどこかへ逃亡したそうだ。
それを訊いたアルコーン公爵様は指名手配を国内から国外まで拡大。
結果、重川はどの国においても表を気軽に出歩けなくなるとのことだ。
僕も危ない目にあったし、愛美は殺されかけた。
ゆえに同情心は湧かなかった。
そして侵攻した公国軍はそのままアーガスト王国を占領。
そのまま反戦派の貴族たちとの和平交渉になるとのことであった。
予定ではアーガスト王国は消滅、デミウルゴス公国に組み込まれるだろうとの予想だ。
戦争の終結により僕たち生徒陣の役割も終わった。
侵攻した公国軍の中には公爵様が認めた者たちも若干名いる状態の為、物資を大量に積んだトラックと、人員分のバスを置いて僕たちは撤収することになった。
その認められた者たちは予め運転訓練を受けた者たちであるため、戻る際も問題ないと思われる。
ちなみに僕たちが移動するバスに関しては、元の世界の人間としてある程度扱いに慣れてるため、公国軍の戻る際の速度とは比較にならない速度で戻る形になる。
日本のように完全に整備された道というわけでは無いので60km/hぐらいで走っていても相当な揺れだったらしく、保護区画に到達する頃には何十人か吐いたそうだ・・・
南無・・・・・・・・
そして、変化その4。
魔人化し始めていた重川とは対照的に、世界に対しての憎しみを持った状態のベアトリーチェ王女ではあるが、その根底には殺さざるを得なかった兄への愛情があったがゆえに魔人化できなかったのではないかとの結論に至っていた。
そのベアトリーチェだが・・・・
僕たちの車にのって寝ている。
一応聖女でもある愛美が回復魔法であらかたの傷は治しているが、いきなり暴れられても困るので、王城にあった隷属化の首輪を嵌めてさせている。
彼女の扱いについては、公国軍指揮官には討ち取ったが、死体については判別不可能レベルだと説明した。
公爵様にはあとで伝わることになるだろう。なにせ僕のハーレムにはレミリアがいるし、ハーレムに参加していないとはいえ同じ家にアリシアも住んでいるわけだから。
つまるところ彼女は保護観察処分として僕の独断で引き取ることにした。
当然だが愛美・愛理・明美は猛反発、里美・絵里奈は口では不服は唱えなかったものの表情は明らかに不満そうな表情だ。
単純に僕の立場が悪くなるだけの問題ではなく、自分たちを散々苦しめた対象である
ため当たり前でもあるだろう。
でも僕はこの王女を見捨てることができなかった。
僕は優しい人たちに助けられ囲まれたからこそ、悪い方向には結果的にそれほど走らず、真っ当と言える人生を歩むことができている。
しかしこの王女は違った。
周りの全てが自分の敵であり、その者たちは自分がどのような形であるかわからないが愛した兄を殺さざるを得なかったため周りの全てを恨んだ。
僕とこの王女は何かのきっかけが違っていたら全く正反対の立場になっていただろうと思う。
そしてそのことを話したら愛美達は何かに気づいたように目を伏せた。
「・・・う・・・・ん・・・・?ここは・・・?」
「目が覚めたかい?」
目を覚ました王女に僕は声をかける。
「お前は!?ふぁいあ・・あぐ!?」
「悪いけど隷属化の首輪を着けさせてもらってるよ。魔法も含めた暴力的な行為の禁止を命じてある」
どうにも目覚めて認識して早々に攻撃魔法を仕掛けようとしたようだ。
「・・・・・ふぅー・・・なぜ捕らえた?なぜ殺さなかった?」
「それは・・・僕の我儘だね」
「どういうことだ・・・?」
「生まれや育ちは全く違っても、何かが違っていれば僕は周りの全てを敵として認識していたはずだ。何かのきっかけが違えば僕は君になっていて、君は僕になっていたかもしれない。
それに・・・それほどに迄つらい思いをしてきた君に何の救いもなくこの世界での人生を終えさせるのは何か違うような気がするんだ」
「・・・・・・・・・・」
「同情だと言われれば何も言い返すことはできない。けれど僕は君にも救いがあってほしいと思った。僕にそれができるのかは分からないけれど、やってもいないのにあきらめるなんてできない・・そう思ったんだ」
「はぁぁぁー・・・まるで兄さまと同じことを言うんだな・・・お前は・・」
「そうなのかい?」
「ああ、兄さまもそうだった。自分が置かれた裕福な環境に身を堕とすことなく、誰かが苦しんでいてそれを助けたい。底抜けのお人好しであった・・・」
「そう・・・」
「それで?どうする?私に居場所などどこにもないぞ?」
「確かにね・・・君には僕の屋敷で暮らしてもらおうと考えている」
「そうか・・・どのみち生きながらえることができたとしても私は捕虜だ。自由など無いのは当たり前だ」
「そうだね・・・そこも何とかしてあげられれば良かったんだけど、君自身が作ってきた敵が多すぎてそれに関してはどうしようもないね」
「だが・・・お前にも興味がわいてきた」
「「「「「!?」」」」」
「私は兄さまを愛していた。兄としてではなく、一人の男性としてだ。
その兄さまと同じような考え方をした底抜けのお人好し・・・
そんなお前がどんな道を歩むのか見てみたくなった」
「それは一体・・・?」
「どのみち私は奴隷でもある。好きにしていいのだぞ?
それにスタイルにもそこそこ自信はあることだしな?」
言いながら、ただでさえ王女として胸元の露出が比較的多めのドレスが、ボロボロに破れた影響で胸元が露わになりそうになっているのに、
そこをさらに露わにさせようと服を引っ張る。
愛理・明美がGやHとか爆乳クラスなら、愛美とレミリアはEとかFの巨乳クラス。
そして里美とヒーレニカがDやCと言ったスレンダーで、絵里奈がBといった感じのロリ的な感じだ。
そしてベアトリーチェは愛美やレミリアと同類だ。
それに愛美とは方向性が若干違うが、彼女もモデル体型でもあった。
そしてその容姿と言葉に殺気立つ女性陣。
「「「「この泥棒猫・・・!!!」」」」
思わずその反応に、愛美が返した反論が、
「どの口がそれを言うのかしら・・・!?!?!?」
こ、怖い!!!
後ろが気になるからミラーを見たいけど、ある意味見たくない!!
みたら地獄を見ることになりそうだ・・・
ちなみに勇也君は別の車に乗っている。
―――地獄を見たくないから俺はそこに乗りたくない―――
とのことだったが、まさかこの流れを予期していたのか!?
ならば、何故教えてくれなかったのだ!?
君は友達ではないのか!?
いくつもの苦しみの果てにようやく手にした平穏の気配に喜びながらも、僕は心臓がとまりそうな殺気を背中に感じながら公国首都の屋敷へと向かった。
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