2-4-6
王国軍との最終戦争ともいうべき戦いの序章は、公国軍・・・というより僕たちと言った方が正しいのだろうか?
何にせよ僕たち側の勝利で終わった。
自軍の結果だけ見れば割と上々といっても差し支えないはずだ。
侵攻してきた王国側の正規軍人たちは、ほぼ全員が死亡。
生き残った者も若干名いたことにはいたが、なりふり構わず殆どの装備を捨てて王国へと逃げ帰ったようだ。
尤も、あの悪辣非道な王女が逃げ帰った兵士をそのままにするとは思えない。
実際のところがどうなるかは不明だが・・・
まぁ決していい未来は見えないだろう。
無力化された王国軍側についていた生徒たちは全員捕縛された。
とはいえ彼らの扱いは、今までの僕たちのようなものではない。
なぜなら戦争に対して消極的な形で攻め入ってきた今までの生徒たちに対して、
彼らは殺戮を是とした考え方の元で攻め入ってきたのだ。
当然今までのように
『王国に否応なしに従わされて戦わされてきた哀れな少年少女』ではなく、
『自分の意思で人殺しをする行為に加担した非道な人間』という評価になる。
一部生徒たちは「怖くて逃げだせなかった」などと言っているが、馬鹿正直に信じるほど公国軍はもちろんのこと、僕たちも愚かでは無かった。
隷属化の首輪を着けられたことによって、迂闊に逃げ出そうとすれば、
良くてその場で抹殺、最悪の場合・・といっても主に女子生徒にはなるが、
人としての尊厳すらも踏みにじられた生活を際限なく送った末に、抹殺されることになるのだ。
そんな環境にいて逃げ出せなかった人たちと、隷属化の首輪を着けられずに済み、逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せた人たちとの扱いが同じになるわけがなかった。
彼らのことは全員捕縛し、捕虜としての扱いになることが決まった。
こういうトラブルの解決には生徒会長として学校内でのトラブル・・・という問題解決にある程度知識と経験のある里美が相談役に乗ってくれた。
とりあえず彼らの今後の扱いとしては次の通りになった。
・保護区画を拡張し彼ら専用の区画を整備する。
・僕らの区画も整備し、今まで所属してくれた生徒しか入れない区画を整備する。
・それとは別に共有の区画を整備し、彼らの本質を見定める。
これらを定める理由は簡単だ。
まず一つ目に彼らは今まで支配者としてこの世界で生きていたわけだ。
隷属化の首輪が無くなり、魔法という日本にいたころとは違う・・ある意味未知の力によって強制的に従わされることは無くなったとはいえ、
心の奥底に刻まれてしまった生徒もいる、被支配者としての部分に付け込もうとする生徒も出るかもしれない。
そのため僕たちの専用区画と彼らの専用区画を分けるのは当たり前であった。
しかし、王国が怖くて真実を言い出せなかった可能性も決してゼロではない。
その場のノリで残虐なことを言ってみたりしただけで、実際にはそういうことをやろうだなんて考えなかった・・・という生徒ももしかしたらいるのかもしれない。
逃げ出そうとしなかったのは、首輪を着けられた生徒たちの立場が悪くならないようにするための配慮だったのかもしれない。
その生徒たちを庇護するような発言をすれば、自分が付けられることになるかもしれない恐怖をもっていたかもしれない。
そんな可能性があるかもしれないという事で、当面は保護観察処分が決まった。
あの区画は良くも悪くも快適だ。
その快適な空間の中で気が緩み、悪しき心の本性がでれば、その後は戦犯扱いとして公国に引き渡し、公国の法に則り処分してもらう形になる。
快適な空間の中でも仲間を労り、ともにあろうとするのであれば、正式に僕らの仲間入りという扱いになる。
もちろん、すぐに同格では無く現在所属している公国に対して貢献する姿勢を見せればその分の評価はする形になる。
その後僕たちは代表者として、僕、勇也君、愛美、愛理、明美が参加する形で、公爵様との面会・・・というよりも今後の方針を定める会議に出席することになった。
要は、この戦争に対して、どこまでやるのか?という事だ。
平たく言えば王国に対して圧力をかけ、経済的な制裁を加えるだけに留めるのか。
それとも王国内に逆に侵攻して諸悪の根源である王族を全て捕らえる方向で動くのか、という話だ。
結果として王国内に侵攻し王族だけでなく、王族に対して肯定的であった・・・
つまり侵攻賛成派の貴族を全て捕らえるという事になった。
そして、公爵様からも注意事項の説明があった。その内容は、
とりあえずは捕縛を目的にするが、最終的には処刑する流れになるだろう
とのことであった。
理由は2つ。
1つは言うまでもなく宣戦布告と同時に開戦という行為は非道でしかなく、外交努力をする暇も与えないやり方は認められず、それを是とする国の主要人物の存在を今後も許せば戦争の火種になることが明白だから。
2つ目はこの世界においては誘拐扱いとなる、勇者召喚をもって1000人近い・・それも少年少女たちを否応なしに戦場に駆り出すという行為をしたから。
この2つ目の理由には、侵攻し支配した土地の少年少女に対して無残としかいいようがない扱いをする可能性が非常に高いことが予想されるというのが大きい。
つまり、ことは僕たちの感情だけの話ではないということだ。
そうして僕たちは王国へと反攻することになった。
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