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保護区画に着いた僕は、明美が呼びかけて集まってくれたみんなに僕の考えを話した。


「ようやく決断してくれたか・・・」

「なげーって、どんだけ待たせてくれたんだか」

と別の意味で呆れ気味の生徒もいれば・・・


「確かに戦争に加担することは怖いけど、でも今の自分たちを守るのも必要なことだよ」

「私たちがそう思っても、リーダーの意向に逆らうのはあまり良くないしね。ましてリーダーが私たちを保護してくれたのなら、その意思に反していると言えるような行為は裏切りだからね」

と優しい言葉をかけてくれる生徒もいる。


「みんな・・・今までごめん、ありがとう」


情けない気持ちに襲われながらも僕は謝った。

そんな僕を彼らは笑って許してくれた。




そこからの行動は早かった。

薬屋・・・と称して良いのか分からないけれど、あらゆる化学薬品も売っている薬屋では普通に生活する分には使わないようなものも売っている。

詳しい配合などは分からないが、爆薬の材料を今までにも購入していたが、その購入量は一気に増えた。


またその爆薬を少量使ったやり方として、鉄パイプ等を使って作られた銃もかなりの量が作られた。

今まではあくまでも防衛に使うだけの量としての購入だったために、驚きを隠せなかった。


主にこのあたりのことをやっていたのは男子たちだ。

一部女子にもその手の知識に聡い者たちもいるにはいたのだが、メインはかなりマニアな部分までしっている一部男子生徒が担当した。


また殺傷能力としては低いものの、比較的融解温度の低いスズを球体状に固めて鉄パイプで殴り飛ばすといったやり方も一応取られるようになった。

この手のやり方に参加するのは主に野球経験者だ。

それだけで相手を倒せるとは思えないが、金属の塊が100㎞/hを超える速度で迫ってくるのだ。


日本に居たころの交通事故を思い出してみれば60㎞/hでも出てれば十分に人を殺せる速度ともいえる。

100㎞/hを超える速度で迫ってきたら、いくら鎧を着ていても頭に当たれば脳震盪ぐらいにはなるだろうと思う。




僕の方も新しいやり方を考えた。

スピリタスを大量に購入し、高圧洗浄機のタンクに入れて放出するやり方だ。

スキルで購入した高圧洗浄機は何も入れなければ水が出てくるだけだが、タンクに別の物を入れておけばそれが出る仕組みになっている。


しかもそのタンクというのが曲者で、高圧洗浄機のタンク注入口から入れられるのだが、どうみても本体にタンクがついていないのだ。

つまるところ明らかにタンクとなる場所に別の空間が繋がっており、そこにストックを入れておくことができるというものだ。

これならば重くて走ったりすることはできないが、歩きながら火炎放射器としての役割を果たせるのではないかと思う。


そしてもう一つ、防衛のみに使える方法を考えた。

こちらもスピリタスを使用する。

ホームセンターに何故業務用としか思えない放水銃が売っているのかはすごく疑問に思うところがあったが、売っているのだから仕方ない。

こちらもタンクにスピリタスを沢山詰め込んだ。


あとは放水銃で接近してきた敵に対して、辺り一帯にスピリタスをまき散らし、

止めと言わんばかりにファイアボールを打ち込めば火炎地獄と言わんばかりの惨状が出来上がるだろう。


はっきり言えば苦痛のみが存在する死に方になることは容易に想像できる。

だが、黙って殺されるのを良しとするつもりは、今の僕にはもう無い。

そうして着々と準備を整えていく。



ちなみに公爵様にはあくまでも僕たちを独立した指揮系統の軍勢として組み込んでほしいことだけを伝えた。

以前公爵様にお願いした、公爵様の軍勢の一部を僕の方で指揮する権利というのはなしになった。



そして車も大量に購入した。

ラン〇ルのフロント部分に追加の装甲を取り付けた車などは多数配備した。


加えてトラックやバスと言ったものも今まで以上に台数を揃えた。

こちらはあくまでも人員や物資の輸送が目的だ。


他にキャンピングカーも取りそろえた。

またかなりサイズの大きいテントに、かなり大きいプールを購入した。

尚、僕が購入できるユニットバスはシャワー単体でも購入できるものだったようで、

とりあえず、僕が使っても問題ないとされる場所であれば自由に設置できるというトンデモ仕様だった。


加えてこちらもアイテムボックスでの運搬が可能という、やはりトンデモ仕様。

そのため躊躇うことなく購入し、移動し拠点を構えると同時にシャワールームや即席の風呂を設置した。


なお公国軍にも物自体は使えるようにしてあげたが、設置のための人員は公国軍側で出してもらった。

それでも軍人さんたちは喜んでいたが・・・



またこれを機に、家庭用の物ではあるがカセットコンロなども多数そろえられている。

僕をはじめとして、僕の近くにいる愛美達は既に食料品を購入できるため、僕一人に頼らなくても大量の食料品を入手でき、それを生徒たちの中で料理が得意な者が調理すれば、野外とはいえど立派な食事が出来上がる。


また僕らの食材も一部を公国軍に提供し、簡単ではあるが暖かい汁物を食べれるようにした。

それによりさらに士気が向上した。

食事などの生活環境や、衛生環境を整えればそれだけ士気の向上にはつながるゆえだ。


日本に居たころの製品様様と言ったところだ。

当然だが敵である王国軍にはこのような快適装備は存在しない。

携帯食に向いたわびしい食事を持ち、馬車などを用いながらゆっくりと進むしかない王国軍とは当然士気が全く違った。



そうして準備をどんどん進めている間に10月も終わりに近づいた。

時期としては紅葉が見ものというべき時期だ。

しかし時は待ってくれなかった。

積雪が本格化してからでは侵攻に差し障ると考えた王国軍がいよいよ国境へと近づいてきているとの報せが入った。




そして僕らは対面することになる。

この世界に来てからというもの何度か出くわしてきた、人の本気の悪意に。

王国との戦争は最終局面に入ってしまった。

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