2-4-3
僕は自宅に帰るなり、愛美達を呼び出した。
「どうしたの、レン君。何か用事?」
「蓮司から私を呼び出すなんて・・・これは正式なプロポーズかしらね?」
「あなたの頭の中ってどうなってるの?」
「もちろん蓮司一色よ。何を当たり前のことを聞いてるのかしら?それとも浮気してるの?」
「はぁ!?私は幼いころからレン君一択なんですけど!」
「一度逃げた女が良く言うわね」
・・・・・最近バトルが激しくなってきている。
困った顔をしていると明美が聞いてくる。
「色恋沙汰に頭が染まってる二人はこの際放っておくとして、どうかした?」
「「放っておくな!!!」」
2人には悪いが無視しよう。
「ちょっと王国軍の・・・というよりもこの戦争に対しての考え方を変えようと思ってね」
「「「「「「「!?」」」」」」」
みんなが驚くのも無理はない。
僕らは今までこの戦争に対しては生徒の保護という面だけど積極的に動いていただけで、王国軍と公国軍の戦争自体に関してはあまり積極的には動いてこなかった。
それは戦争という物事を忌避し、平和主義を掲げる多くの日本人としての考え方が根底にあるが故のどうしようもないことだった。
「確かに僕も積極的には戦争に参加したくはない。だけど僕らが拒んでいたところで彼らの意思は変わらない。むしろ戦う気がないのならば・・と一方的にこちらを蹂躙してくるだろうと思う。もちろん今現在でもそれに備えた動きは取っているとは思うよ。だけど僕たちがケリをつけないのであれば、延々とこの戦争は続くと思う。
僕には彼らがあきらめるとは思えない」
「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」
「ここまで極端な考えはあまりしたくはないけど、王国を、最低でも彼らとあの王女だけでも何とかしないと、僕らにとっての平穏な日常は多分永遠に訪れることは無いと思う。それなら、どこかのタイミングでこちらから仕掛けるのもありだと思うんだ。」
ヒーレニカとレミリアを除けば彼女らは全員平和を基本としてきた日本人だ。
嫌われるだろか?
恐れられてしまうだろうか?
そんな考えに恐怖しながら僕は考えを述べた。
「そう・・・ようやく決断してくれたのね・・」と愛理が真っ先に反応した。
「え?」
明美がその答えに補足をしてくれる。
「私たちはだいぶ前からその考えではあったのよ。ただ蓮司は基本的には私たちの誰よりも争いを好まない性格をしているからね。そうなると私たちがその想いをしまうか、あなたの考えを変えさせるかしかない。
だけど後者は取りたくないわ。
だから必然的に私たちは、あなたが思っているであろう、今の生活を維持することを最優先にしたのよ」
愛美が続ける
「レン君が私たちのことを想ってくれているのは知っているよ。
だけど同時に私たちもレン君のことを想ってるんだよ。
保護区画にいる人たちも、私たちの想いとは少し方向性は違っているし、真実を知らされているわけでは無いけれど、それでもレン君がこの世界で・・・この国で私たちを保護するためにいろいろなことをしてくれたことにはなんとなく気づいてるんだよ。
だから本当は平穏を取り戻すために王国を叩くことは早くやりたいって思ってはいるんだけど、レン君の感情を優先してあくまでも防衛に専念することにしたの」
里美、絵里奈、ヒーレニカ、レミリアも頷いている。
そうだったのか・・・
僕は知らず知らずのうちに彼女らに守られていたんだ・・
僕自身の不甲斐なさに辟易する一方、
彼女らの献身的な優しさに触れてありがたい気持ちでいっぱいになった。
「だけど、できればでいいんだけど、保護区画についてからもレン君の思う気持ちをそのまま彼らにぶつけてほしい。
今までは私たちが中間に立っていたけれど、たぶん彼らはレン君からの言葉をそのまま聞きたいだろうから」
僕は静かに、でもしっかりと頷く。
「決まったなら善は急げね。私たちは保護区画に行って全員を集めましょう。
蓮司は1時間くらいしてから着て頂戴・・・それに、たぶん彼の方もあなたに言いたいことがあると思うしね」
そうして彼女たちは先に保護区画へと向かった。
そして僕は彼に向き直る。
「勇也君・・・」
「蓮司・・・・・・」
「勇也君はやっぱり反対かな?」
「やっぱりって何だ・・・やっぱりって・・?」
「いや、重川と戦うときでも反対してたし、そうなのかなって・・・」
「・・・・・・」
沈黙の後にゆっくりと話し始める。
「正直に言えばまだ迷ってる。戦争は良くないことだ。自分から積極的に参加するなんて・・・とは未だ思っているよ」
「・・・そうか」
やはり相容れないのかな・・・
「だけど、今回に関しては別だとも思い始めてる」
「・・・え?」
「あの時の蓮司はきっと重川の危険性になんとなく気づいてたのだろう?だからあんな手も用意していた。違うか?」
「・・その通りだよ」
「蓮司、頼みがある」
「なんだい・・・?」
「もう一度重川を説得するチャンスをくれ」
「それ自体は良いけど、頷かなかったら?」
「その時は・・・俺が斬る!」
「本気・・・いや正気かい?」
「ああ。俺が守るべきは今の蓮司達との関係性だ。かつてのクラスメイト達じゃない。だができることならば、あと1度だけ、いろんなことに気づいた今の自分で説得してみたい。だがそれでだめなら俺もそれを切り捨てるまでだ・・・!」
「勇也君・・・分かったよ。勇也君の想いは尊重する。だけどなるべく後悔しないようにね?」
「ああ、ありがとう。蓮司」
「よしてよ、僕は勇也君ほど有能じゃないけど、これでも友達のつもりだよ?」
「謙遜も過ぎると嫌味だぞ?」
「なんのこと・・・?」
呆れたようにため息をしながらも、彼は手を出してくる。
そして僕はそれを握り返した。
そうして時間が経ち、僕も保護区画へと向かう。
彼らはどんな反応を示すだろうか。
不安になりながらも向かう僕だった。
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