2-4-2
僕はこの戦争に対しての関わり方について相談・・・もといその意思を伝えるために公爵様に会いに行くことにした。
確かに王国軍は公国に攻め入るための戦力として僕たち異世界人を使っている。
しかし、実際にはこの世界の中では、王国が公国に対して侵攻しているという『だけ』の話だ。
国家間での諍いに一個人が何の断りもなく参加するのは、恐らくその場を搔き乱す行為でしかなく、困るのは王国軍だけではなく、僕らを保護してくれている公国軍にも迷惑が掛かってしまうだろう。
公爵様に面会してもらい僕の考えを説明する。
「そうか。レンジ殿は戦いに参加するつもりか・・・」
「はい」
「理由を聞いてもいいかね?」
「いうまでもないことですが王国軍は公国に対して侵攻を行っています。ですがその対象の中には僕たちも入っています。確かに僕たちは元々はこの国の国民ではなく根無し草です。ですが他国で一から生活基盤や人脈を整えるのは不安定すぎます」
「・・・・・・」
「ならば、ただ逃げるという選択を行うのではなく、必要な時には力を振りかざし、自分たちの身を守ることができるようにするべきだと考えました。友好関係を目的として近づくのであれば言葉を交わそう・・・敵として狙ってくるのであればこちらも力を振りかざそう、というだけの話です」
「考えは理解した。しかしレンジ殿は失礼ながら戦う力はないのでは?」
「確かに僕に戦う力はありません。直接的には・・・」
「では直接的ではない方法であれば戦う力がある、と?」
「というよりも本来は戦いを目的にした道具では無いのですが、使い方を変えれば人を殺す方法としても使えるというだけの話ですかね。例えば包丁とかがそれにあたります。もともとは料理をする目的で作られてますが、やろうと思えば刺して人を殺すことができるというものがあるってことです」
「それで勝てるのかね?」
「それだけでは勝てないでしょう・・・僕だけでは」
「『だけ』とは?」
「具体的には保護された他の生徒達です。彼らは積極的に戦いに赴こうという者は少ないですが、王国を脅威に感じているのは確かです。そのため僕たちの世界での戦いで使われていた武器を作ることのできる知識を持つ者もいました」
「それを作れると?」
「彼ら『だけ』では無理です。彼らには知識はあっても材料となる物を入手するだけの伝手がない。
そして僕『だけ』でも無理です。僕には材料を入手する方法はあっても、知識がない。
しかし・・・」
「なるほど、レンジ殿と、その彼らの力が組み合わさればそれも可能である・・か・・・」
「はい。既に保護区画の周辺は彼らによって魔改造されており、多数の罠が仕掛けられています。本来の道から外れたルートで侵入しようとすると、そのエリアに入ったとたんに爆発する物が地面に埋め込まれていたりと・・・」
「・・・・・・なるほど。貴殿を味方にしようと考えたファスペルや私の判断は間違っていなかったわけだ。もし貴殿を敵にしていたらその力は今頃公国へと向いていた・・・であるか」
「それとは別に僕個人も少し準備したいものがあるのですが・・・
公爵様、僕にごく一部の軍隊の指揮権を与えていただけませんか?」
「・・・厳しいことを言ってくれるな・・。理由は?」
「僕自身も防衛のみに使える対抗策を思いついている物があります。ですが僕一人だけでは大きな効果は得られないでしょう。そうなると誰かに協力してもらう必要がある。しかし僕たちの前居た国では人を殺すというのはどのような理由があっても、忌避されていました。それこそ相手が犯罪者であっても、なるべく生かして捕らえようとするほどに」
「・・・それは、綺麗ごとすぎるのでは?」
「そうかもしれません・・・どちらにせよ僕たち異世界人で保護された人たちに協力を呼びかけようにも、どこまでの生徒たちが賛同してくれるかわかりません。もちろん、この後僕は保護区画の方に行き彼らの説得を試みてみます。ですがうまくいかなかった場合は力をお貸しいただきたいのです」
「はーーーー・・・・できるかどうかは分からんが、やるだけやってみよう。
もし希少な品を卸している商人が公国の戦の為に協力しようとしていて、そのための人員が必要だと離せば反発は少ないかもしれないからな」
「すいませんが、よろしくおねがいします」
「話は変わるのですが、お酒を最初は格安で卸すことはできますか?
希望するなら適正価格にかえますが、その後も卸すことはできます」
「なぜかね?」
「戦勝を祝うための準備をしようかと」
「気が早すぎるのではないかね・・・?」
「そうかもしれませんね・・・でも負けるつもりで戦をするつもりはありませんよ」
「・・・・ハッハッハ!!確かにそうであるな!よし、ならば言葉に甘えることとしよう。レンジ殿の世界のお酒だ。おおかたこの世界の物よりもおいしいのだろうしな。今から楽しみだ」
その後試飲用のお酒を何本か渡して、僕は一度家に戻った。
目的は愛美達を説得しつつ、保護区画の皆を説得するのが目的だ。
上手くいくだろうか・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます