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僕はその問題に向き合うことにした。
「天神君・・・いい加減に項垂れるのはやめたらどうだい?」
「蓮司・・・」
「何をどう取り繕ったって重川が裏切者だった事実は変わらないよ」
「なんでそんなに簡単に割り切れる!?」
「簡単だよ。重川は敵だった。ただそれだけだよ」
「だからなんでそんなに簡単に割り切れるんだ!小さいころからの幼馴染なんだぞ!?望んだって簡単に得られるものじゃない!なのに何で・・・簡単に切り捨てられるんだ!?」
「逆に聞くけど、何でそんなに重川に固執するのかな?」
「なぜ・・・だと!?」
「「・・・・・・・・・・・」」
そして答えに行き当たった僕は言ってみる。
「ああ、そうか。天神君は重川のことを全面的に信用してたんだね?」
「何?お前は違うのか!?」
「違うよ」
「見損なったぞ、蓮司!お前がそんな奴だったなんて!」
「見損なったのは僕も同じだよ、天神君。
重川は僕たちと友人になるために近づいて来た時から何か裏があるやつだと思っていた。具体的に言うと、よく見ていないと気づかない程度に僕と天神君を邪魔そうに見てることなんてよくあったし、逆に愛美に尋常じゃない視線を向けることだって時々あったんだよ?」
「!?」
「ヘタレだって言われるのを覚悟のうえで言うけど、僕が愛美から距離を取ったのは単に愛美が僕と比較してどんどん可愛くなっていくだけじゃないんだ」
「確かにヘタレね・・・」
「ヘタレ少年・・・」
「でもそれはそれでグッとくるかも・・・?」
「そ・・・そんなはっきりと言っちゃ・・・」
愛理達が小声で言っているのが聞こえる。う・・・うるさいなぁ・・・
「か・・・可愛い・・・・・・・」
愛美は愛美で顔を赤くして照れているようだ
続けて言う
「僕や天神君の愛美との距離が近づくたびに重川の視線に、憎悪や嫉妬のような感情が混じっているのを感じ取っていた部分もあったからこそ、僕は愛美を守るためにも距離を取るようにしたんだ」
「「「「「「!?」」」」」」
「そして決定打はこれだ。僕らはそれまで幼馴染の友人だと思っていた人物に明確に剣を向けられた。それ以上の理由が必要なのかな?」
「そ・・・それは!でもあいつだってこの世界に理不尽な理由で呼ばれた被害者なんだぞ!?」
「その理不尽な理由で呼ばれていても、決して悪い方向に走らなかった先輩たちに、その言い訳が通じると思うの?」
「・・・・・・・・!!」
「それにさ。僕は確かにこの世界には無い異能というべきスキルを持ってるかもしれないけど、勇者じゃないし聖女でも聖人でもないし、剣聖や剣豪でもないんだよ?
僕一人ができる事なんてたかが知れてる。
重川も含めたすべてが拾えないなら、自分にとって拾えるものの中で拾いたいものを拾って生きるのが、生きるってことじゃないのかな?」
「それは・・・!」
「日本でもそうだったでしょ。
もっと遊ぶことができるなら、あれが買えれば、あの人と結ばれれば・・・
そんな自分にとって都合のいい未来を全部手に入れられればいいけど、大半の人は手に入れられないものと手に入れられるものを明確に分けて生きている。
それはこの世界に来たからといって変わる物じゃないでしょ?」
「だけど!あいつは友人なんだぞ!?幼馴染なんだぞ!?なら最後まで信じて救おうとするのが俺たちの在り方だろう!?」
ブツンッ!!!
何時まで経っても煮え切らず理解しない勇也にキレた。
「いい加減にしろよ勇也!!!
現実を見ろ!あいつは僕たちに剣を向けた!殺そうとしてきたんだ!
現に僕を庇った愛美は死にかけたんだぞ!?
だとするなら愛美に庇われなければ、僕が死んでいた可能性だって十二分にあるんだぞ!
最後まで信じる!?救う!?
なら友人のはずの人物を殺そうとするのが、友人としての在り方なのか!?
確かにあいつの攻撃を防ぐだけの力が無い僕も強く言う権利はない!
だけど、疑いつつも今ある物を守ろうと君が本気で防御してたら、僕や愛美が死にかけるようなほどのことは無かったんじゃないのか!?」
「!!!!!!」
「俺は・・・」
「勇也・・・君が何をどう考えて、どう答えを出すかは僕にはわからない。
でもあいつは間違いなく、次に会えば僕も含めて僕たちを殺そうとしてくるはずだよ。
そんな時に僕は何もせずに大切な人たちを失うつもりはない。
もちろん捕縛ができるならその方がいいけど、僕は勇者じゃない。
そんな大層な力は持ってないんだ。
なら最悪の場合殺してでも、あいつの暴力を跳ねのける力を使う必要がある。」
「・・・・・・・」
「勇也。君が望む未来はもう分かった。だけどそれとは別に、君が何が何でも守りたい未来は一体何だい?そのことをもう一度考えたほうがいいんじゃないかな?」
そういって僕は部屋を出ようとする。
愛理達もそれに続くし、とまどっている愛美も最終的にそれに続いた。
明日以降は具体的な方法や新しい手段を見つける必要があるし、破壊された客室も治さなくちゃいけない。
関係各所への説明も改めて必要だろう。
そうして僕は、保護区画の部屋の一室を借りて、彼女たちと眠りについた。
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