2-3-5
空間をくぐった僕は目の前にいるヒーレニカさんを視認した。
対して突然現れた僕にヒーレニカさんは目を白黒させている。
「え?・・・蓮司さん?・・え?なんで?」
どうやらここは首都にある屋敷で間違いないようだ。
「スキルが解放されたのと緊急の用事があったのでスキルで帰ってきました」
「・・・・・・もう何でもありね。蓮司さんのやることには慣れたつもりだったけど、甘かったみたいだわ」
納得いかないが、今はそれどころじゃない。
「ヒーレニカさん、エリクサーをもう一本作ってもらうことはできますか?」
「なぜ?蓮司さんたちは保護された幼馴染に会いに行ったんじゃないんですか?
それともその幼馴染が回復不能な怪我を負っているんですか?」
「逆です」
「逆?」
「僕たちの最後の幼馴染は重川という男子生徒です。ですが重川は保護されたのではなく、元幼馴染であるという点を利用し僕たちに近づくのが目的でした。
奴は今でも王国の手先。もっといえば初めから支配者側に立っていた存在でした」
「!?」
「重川の撃退そのものには成功しました。ですが奴が最後に放った攻撃によって、本来僕は殺されているはずでしたが・・・愛美が庇ってくれたんです。
ですが庇った愛美は両足を吹き飛ばされ、体もズタズタにされてしまったんです」
「そんな!?」
「幸いにもヒーレニカさんから貰いつつ辺境伯様に渡したポーションは、エリクサーは全て渡してしまいましたが、上級ポーションに関しては保険で少しばかり残しておいたので、一命はとりとめていますし、安定もしています。
ですが上級ポーションはあくまでも傷を癒す薬です。失った足まで取り戻せるものではありません」
「わかったわ!そういう事なら直ぐにエリクサーを作るから待っててちょうだい」
「少しでも早くエリクサーを届けたいです。ヒーレニカさん、この上級ポーションは材料にできますか?」
と言いながら上級ポーションを渡す。
「ええ。もちろんよ。ならあとは聖草のみね。直ぐに買ってくるから待ってて!」
そう言って彼女は花屋へ行き手早く購入してきた聖草を使ってエリクサーの製作に入った。
重川・・・
お前だけは許さない。
たとえこれが利己的な行動で、ショッピングセンターのテナントが閉じることになったとしても、奴だけは絶対に許さない。
許してはいけない。
ここで奴を許せば、僕は今度こそ本当に大切な者を失ってしまうだろうから。
「・・・待たせたわね。できたわよ、エリクサー」
「ありがとうございます。ヒーレニカさん」
受け取り、大事にしまうと僕は彼女を抱きしめた。
「れ、蓮司さん!?」
「すいません。愛美が死にかけたとき僕は怖かったんです。そしてようやく気付いた。愛美が、愛理が、里美が、絵里奈が、明美が・・・そしてヒーレニカさんが僕を愛してくれている。
今まで僕は一応自分自身の将来とかそういうのを考えながら全員のことも考えてきたつもりでした。
でも僕は、何よりも僕を愛してくれている、みんなのことを本当の意味で考えてなかった。
期待して裏切られるならと、傷つくのが怖いからと・・・
僕は皆からの想いに気づいておきながら、それを受け取るのを拒否し続けた。
でも僕はもう逃げません。
6人とも僕が愛する女性です。僕は誰よりも先にみんなのことを考えなくてはいけない。
ヒーレニカさんは僕の想いを受け取ってもらえますか?」
「・・・ずるいわ。既に気づいているなら私が拒めるわけないじゃない」
「・・・・・・ごめん」
「いいわ。でも許すにあたって条件があるわ」
「なんですか?」
「愛美ちゃんが元通りになったら私のことも呼び捨てで読んでちょうだい」
「わか―――「今は急いでるんでしょう?早く戻って私の名をそのまま呼んで?」
黙って頷き、僕はすぐに愛美たちのもとへと戻った。
かなりの時間が経過していたらしく。
愛理は緊急面会を終わらせて既に保護区画に戻っていた。
どうにも【親愛の絆・改】は相互ネットワークのようになっているようだ。
即ち僕が一方的に使えるスキルではなく、相手の方からも使えるスキルだ。
また所謂ハーレム・・・すなわち女性から女性へのパスも繋げられるとのこと。
「おかえりなさい、蓮司君」
「ただいま皆。あとで皆に話したいこと・・・というよりも聞いてほしいことがあるんだけどその前にやることがある」
そう言って金色のポーションを愛美に渡す。
「これを飲んでくれ」
「わかったよ、レン君」
中身が何かを疑うことすらせず、愛美はエリクサーを飲み始める。
すると体全体がまばゆい光に包まれ、特に下半身に該当するであろうあたりは光の塊となり一切見えない。
光がゆっくりと消えていき、落ち着いたとき・・・
五体満足の愛美がそこにいた。
「足が・・・戻ってる????」
茫然と呟く愛美。
「「「「!?」」」」
驚く愛理達。
「レン君・・・これは一体?」
「それはエリクサーだよ。不老不死なんて言う本物のおとぎ話の効果は無いけど、部位欠損すらも治す霊薬。この世界では本来作り方とかは失われた技術のはずなんだけど、偶然に偶然が重なって作り方が分かってるんだ。
そして材料は全部僕のショッピングセンターで揃うんだ」
「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」
「もちろん僕にはポーションを作る力は無い。僕ができるのはあくまでも材料を揃えることだけ。でもポーションはヒーレニカが作れる。今回も彼女に作ってもらったんだ」
「なるほどね。蓮司君のことだからと達観したつもりになってたけど、まだ甘かったみたいね」
と愛理がいう。
そして無言でうなずく他4人。
解せぬ
凄いのはスキルであって僕じゃないのだが?
「とにかくこれで一応は元通り・・・ていうわけじゃ無いけど、一安心ね。
足を失ったのなら多少は手加減してもいいと思ったけど、取り戻したのなら容赦はいらないわよね?愛美?」
「あれ?そのまま容赦しつつ離れてくれてもいいんですけど?愛理?」
なんかまたバチバチし始めたぞ?
まあいいか。そのあたりのことに対しても決心がついているから。
それ以上に今は片づけるべき問題があと1つ残っている。
そう思った僕はそれに向き合った。
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