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保護区画に到着した頃には夜になってしまった。

理由は言うまでもなく、僕がショッピングセンターで物を買っていたから。


ちなみに1日かけて戻ると宣言していた天神君の方が先に到着していたくらいだ。

僕たちと天神君は保護区画に作られた客室へと先に入った。

重川君は保護されたとき、他の生徒たちとほぼ同じようにボロボロの服を身に着けており、極度の空腹になっていたとのことであった。

そのため彼には消化の良い食事とお風呂を・・・僕たちを待っている間に使ってもらっているとのことだ。


この保護区画で他の生徒たちと、元生徒会長として一番やりとりをしている明美は到着するなり、ここに居る生徒からそう説明を受けたとのことだ。


そして彼が入ってくる。

「・・・・勇也!九条!・・それに蓮司も!生きてたんだな!」

出会うなり一番にそう口にする。


「重川君も無事だったんだね!良かったよ!」

「一博!ようやくまた会えたな!ここはもう安全だ。これからまたよろしくな!」


そう言いながら再会を喜ぶ天神君と愛美。


なにか・・・何かがおかしい・・


疑問を抱きながらも当たり障りのない言葉を返さねばと考えて返事をする。

「う・・うん、追放されたけど運よく商人さんに拾ってもらってね・・・

それからいろんな人たちに助けられながらうまくやってるつもりだよ・・」


重川君は続ける

「蓮司・・・悪かったな。俺は剣聖を授かったのにいざって時に友人を守れなかった」


その言葉に天神君が反応する

「一博。それは俺も同じだ。俺だって蓮司を守れなかった。勇者なんて大層なものを授かったのにだ・・・」


愛美もそれに続く

「私もだよ。聖女なんて力があるなら皆を守れるはずなのに、私は一番近くにいたはずのレン君を守れなかった・・・」


その言葉聞きながら、彼のことを注意深く見ていた僕はここで違和感に気づいた。



首輪の跡が無い!!!



確かに今首輪を着けてない理由はいくらでも成り立つ。

保護されたというのであれば、保護した側は真っ先に首輪を取り外しているはずだ。

もしも、王女から殺戮命令が与えられていた場合は危険な存在でしかないから。


でも愛理も含めて、首輪を着けられて無理やり戦争に参加させられてた生徒たちは、保護されて首輪を外した時、例外なく、長時間首輪を着けていたことによって痣が残っていた。

それらは1週間くらいしないと消えないものだった。


でも彼は保護されてから長く見積もっても2~3日程度のはず。

ならば多少なりとも首輪を着けていた痕跡が残っていないといけないのだ。


でもまだ確証は無い。

ならばカマをかけてみるしかない。

そうして僕と愛理達・・・先輩たちと密かにしていた取り決め事を餌にすることにした。


それは僕が王女から追放された理由は、最初に保護されたグループ以外には基本話さないというルールだ。


王国からかろうじて生き延びてきた彼ら彼女らには猜疑心に苛まれている者もいるだろうとの見解があった。

そんな者たちに、ことになっている生徒が保護する筆頭だと知られれば混乱を招く可能性があるとのことだった。


この理由も愛美や愛理達が彼ら彼女らとの窓口になる理由だったのだ。


「僕としても驚いたよ。まさかで王国を追放されるとは思ってなかったから」


僕は理由のところをぼかした。さて彼の反応は?



「そうさな・・・異世界に召喚されたばかりの俺たちが力が無いのは当たり前だ。なのにで追い出すなんざ普通じゃない」



!!!!!



瞬間、それぞれの反応が一気に分かれた。


幼馴染と再会した喜びに浸かっていた愛美と天神君は頷こうとし、


そして僕・愛理・里美・絵里奈・明美はアイテムボックスから武器を取り出しつつ、愛美と天神君を後ろに突き飛ばしつつ、それぞれの武器を構えた。


「な・・・なにを!?」

重川が驚きながら抗議する。


「蓮司!?なぜ一博に剣を向ける!?」

「レン君!?一体どうしたの!?」


「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」


長い沈黙の後に、僕は言葉を放つ。


「重川君・・・この区画の・・・保護された生徒たちの中でほんのごく一部だけが知っている秘密があって、それ以外の生徒たちは一切知らないことがあるんだ。

そしてそのごく一部にはそれを漏らせば、ここから即追放するっていうことが言い渡されてる。

だから簡単にそのことを言わないんだ・・・」


「!!!」

愛美が答えに行きついたようだ。そして驚き・・・重川君を見る目が恐怖に変わる。


「僕は公には王女を殺そうとした罪で王国を追放されている。

無能の落ちこぼれが理由で追放されたっていう本当の理由を知る人は極僅かなんだけど・・・

重川君・・・いや、重川。その理由を君はどこで知ったんだい?」


彼が何か・・言葉を発する間もなく続ける。


「それにね・・・保護された生徒たちは例え数週間であろうと絶え間なく隷属化の首輪を嵌められてたことによって、外してから1週間くらいは首に痣が残ってたんだ・・・

愛美や天神君は保護されるまでの期間が長すぎたせいで2週間くらいは消えなかった・・・・・

君が保護された知らせは火急の報として伝えられた。

だから保護からまだ2~3日といったところなんだ。

ならば君の首にあるはずの痣が無いのはどういうことだい?」


「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

「「!!!!!!!!」」




僕と先輩たち、そして重川は無言。

愛美と天神君が驚きといったところだ。

僕はかつてと睨みあった。

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