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あの後、彼らの中の代表者を交えての話になった。
しかし、ここで驚きの人物が混じっていた。
名前が示すことから想像がつくように、幡上さんたちと一緒にいた、愛川 絵里奈さんのお姉さんだ。
ちなみに彼女もまた胸が大・・・・いや、なんでもない。
なお、僕は姉妹関係に関しては今初めて知ったが、彼女のことは一応顔と名前だけは知っていた。
生徒会長だったからだ。
だがこの世界に来てから、ほとんど余裕がなかった僕は絵里奈さんと出会ったときに『愛川』という名字が同じであることや、姉妹であることまで考えが辿り着くことは無かった。
名前で呼ぶことに慣れていないけれど、少なくとも愛川さんは今後名前で呼ばせてもらおうかな?
いや、絵里奈さんなら『愛川さん』で済むし、明美さんなら『愛川先輩』で済みそうかな?
なんて考えていたら彼女から自己紹介があった。
「知られていると思うけど一応自己紹介しておくわね。愛川 明美。幡上さんと同じく3年生よ。学校に居たころは生徒会長を務めていたわ。
それから・・・蓮司君。妹を助けてくれてありがとう。」
そうか・・・姉妹だもんな。普通なら心配だよな
「私は王女からはああいう説明をされていたけれど、妹が不遇な扱いを受けていることは知っていたわ。
だからこそ力をつけて認めさせてから妹を助けようと考えていたのだけれど、あの王女はそれも分かっていたみたいでね・・・
働きかけようとしてたところを先手を打たれてしまったのよ。
挙句の果てに夜に眠ってる間に隷属化の首輪を着けられるし、卑猥な行為もさせられた。
本番・・・といって良いのかはわからないけど、そういうことまではやってないわ」
幡上先輩が続けて言う。
「彼女と私は知り合いよ。といってもあまり良い意味合いではなく、主に似たような被害者だったからね」
気になって僕は尋ねる
「被害者?」
「簡単に言えば、彼女も私もスタイルが良かったからね。卑猥な男子たちの視線の対象になることは多くあったのよ。
学年も同じということもあって知り合うことは難しいことじゃないわ。
特に女子というのは噂話とかで情報の伝達は早いからね」
と幡上先輩が言う。
「そういうことね。それにしても蓮司君はあまりそういう目線で私たちを見ないのね?まったく皆無というわけでは無いけど、なるべく意識しないようにしてるのが分かるわ。妹も信頼してるようだしね・・・
これから姉妹共々よろしくね?」
「は、はい。よろしくお願いします・・・・・」
そのよろしくはどういう意味合いだろうか・・?
「それじゃあ互いの自己紹介もある程度終わったことだし、本題に入りましょうか」
と幡上先輩が言う。
それをきっかけに真面目な話になった。
今回、保護した生徒たちは特に反乱の意思は見せず、さっそく現代日本に居たころに近い生活を送れて、リラックスできているようだ。
加えて幡上先輩が条件、というほど大層なものでもないけれど、他の生徒たちも保護していきたいという方向性を示してくれたおかげで、全員からある程度の理解を得られており、中には協力すると言い出している生徒もいるようだ。
しかし問題なのは、もともと僕たちの間でも懸念材料になっていた、より上位のランク帯に指定されている生徒たちだ。
いや、具体的に言うと手首の奴隷所有者としてのバンドのみを渡されており、同時に隷属化されていない生徒たちの存在だった。
彼らは、僕たちが懸念した通り、現代日本に比べて法的な縛りが緩いこの世界で、抑圧されていた感情が解き放たれたのが残虐な行為を是とし始めたとのことであった。
幡上先輩が聞いてくる
「それで?蓮司君はどうしたい?」
「僕・・・ですか・・?」
「そうよ。だってこの集団のリーダーは蓮司君よ。先の一切血を流さない無力化も、保護の手段も、実際の保護も全部蓮司君ありきのやり方よ?
私たちも彼らに対して思うところはあるけれど、リーダーの意向を無視してことを進めることはできないわ」
「僕は・・、その残虐な生徒たちに関しては諦めたいと思っています・・・」
今度は愛川先輩が聞いてくる
「一応、理由を聞いても?」
「それは、彼らがもう僕たちの仲間だとは思えないからです」
「蓮司君につくことによるメリットを話せば変わる可能性は?」
「それは無理だと思います。幡上せんぱ――「愛理よ?」
「・・・・・・・愛理先輩によれば悪辣な思想を抱いている生徒には意図的につけるつもりがなかったと聞いています。ならば説得は無意味かと。これから支配するであろう人たちを好きにしていいと言われたのであれば尚のこと不可能だと思います」
「呼び捨てが良いんだけど?」
ジト目で言ってくる
まだそこまで覚悟決められません・・・許してください...
しかし表情変わり安心したように幡上先輩が言う
「よかったわ・・・」
「え?」
「蓮司君が現実的な考え方の持ち主で」
「・・・・・」
「当たり前だけど私たちは神様じゃない。超人・・・にはなってる人もいるかもしれないけど、すべての人間を救えるわけじゃ無いわ」
「そうですね。だから僕は拾えるものはしっかり拾いつつも、拾えないものは・・・諦めなければ今あるものすら守れないならば、僕は今の自分がもっているものを守るためにも戦うだけです」
「その中には『私たち3人』も入っているのかしら?」
「勿論です」
「そう・・よかっ――「良くないわよ」――たわ」
愛川先輩が文句をつけてきた。
「何が問題?」
当然・・・あ、愛理先輩は不服そうだ。
「なんで4人じゃないの?私は?」
「あら?初日からハーレムに入ろうっていうのかしら?意外と攻めるのね?」
「同じ女ならわかると思うけど?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・裸を見せたこともないくせに」
「はだ・・・!?!?!?」
「絵里奈・・・あなた・・・」
「ち、違うよ!お姉ちゃん!まだ、そういう関係じゃ・・・あっ!?」
「まだ・・・ね・・。蓮司君?」
「いえ・・・その、事故と言いますか偶然脱衣じ――「事故でも見てるわよね?」ょで・・・」
「「「「「・・・・・」」」」」
全員無言になる。
「とにかく・・・方針は決まったわ。私たちはこれから首輪を着けている生徒たちを積極的に保護していく。また、首輪を着けていない生徒は基本的には敵として対処するわ。いいわね?」
仕切り直しと言わんばかりにいう愛理先輩ですが、ここまでややこしくなったのは先輩のせいですからね・・・?
ジト目で思わずみたら自覚があるのか目をそらした。
その後、僕らは新しくグループに編入した生徒たちと一緒に出撃し、王国に操られている生徒たちを積極的に保護しつつ、間接的に王国の戦力を削り取っていくのであった。
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