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1週間後、僕は先輩たちとジム〇ーに乗って王都との国境線を目指した。

目的は言うまでもなく進軍から少し離れたところに位置した勇者召喚されたグループに奇襲をかけて無力化、捕縛、保護をすることが目的だ。


なぜ1週間も経ったのかって?

それは簡単だ。受け入れ施設が無いので突貫作業で領都の外れに作ってもらった期間だ。

ちなみに内装に関してはホームセンターから商品を購入してどうにかするつもりだ。

僕の現在の自宅よりも技術力の高い受け入れ先になりそうだけど、その空間になれてくれれば今後は、最初に保護したグループも説得に加わってくれる可能性は高いからね。


あ、悪いけど、お風呂に関してはお金をつぎ込んで広くする形にして大浴場形式にさせてもらうよ?

個別に作っていくとかなりの金額になるし、いくらお風呂を堪能できるようにするためとは言えど、そこまでする義理は悪いけど無いからね。



今回の作戦としてはいたってシンプルだ。

幡上先輩と有栖川先輩はともに剣士タイプだ。

そして愛川さんが魔法使い。


そのため気化した眠り薬、あるいは脱力薬を風魔法で彼らのが吸い込むように仕向けるというだけのシンプルなものだ。

といっても風魔法を使う際には攻撃だと思われる威力を出さないことが条件だ。

攻撃だと判断されれば防御されて作戦は意味を成さなくなる。


なおかつ目を覚ました後の彼らに対して交渉しやすいようにするために、僕らは一様に一つの方法をとっていた。

洋服だ。

この世界に来てから召喚勇者の誰もが思ったはずだ。

この世界の洋服は日本に居たころに比べて作りが雑すぎるし、肌触りや外見も質素だと。


そのため僕たちは鎧などの下には現代日本で着ているような、おしゃれな服を着ている。

もちろんなるべく動きやすさなども重視したものだ。

どこかのサイトで見たが、人間は8割の情報を視覚に頼っているという。

ならば視覚的に現代日本の服装を、鎧の下に着こんでいて身なりが整えられた僕たちをみて彼らをどう思うだろうか?

ということだ。


必然的に思うはずだ。

『僕らには現代日本と変わらない何かを得る手段がある』と。

僕ら側につけばそれらが手に入るかもしれないと思わることができるのは恐らく大きな交渉カードになるはずだ。


そうして移動し続け、森の中をゆっくりとジム〇ーで移動する。

移動の間、大まかな方向に関しては愛川さんが探索魔法を用いて探ってくれている。

20分ほど徒歩で移動すれば接触できる位置に着いたところで車を降りて、アイテムボックスにしまい込む。


最初の接触は隠れたりするわけでは無く、いきなり姿を見せて、いきなり睡眠ポーションをぶつける。そうしたら多分向こうはそれをたたき割るだろうから、あとは気化した睡眠ポーションをそよ風で彼らのそばに漂わせて眠らせるだけだ。

その後は手早く隷属化を解除し、森から抜ける。

最初は念のための拘束はさせてもらうけれど、敵対の意思がなくなったら直ぐに解放するつもりだ。



そして目的の集団を見つけた。男女30人くらいの集団だ。

といっても見た感じではバリバリ戦えるような外見には見えず、僕らよりは強そうではあるけれど、一騎当千とかと思える外見ではない。

気が削がれているのか会話も聞こえる。


「ねぇ・・・本当にやるの?」

「ならどうすんだよ?」

「でも、人を殺すことになるかもしれないんでしょ?楽しそうにやってる人もいたけど、私は・・・」

「じゃあ、またあいつ等にいいようにされるか?

本番行為はやられなかったみたいだけど、似たようなことをさせられたんだろ?

兵士たちのように王国の為なんていう理念は持ってないぞ、あいつら。

次に失態をやらかしたら、次は容赦なく犯されるぞ」

「そ、それは・・・!」


なんてことだ・・・・・

僕や幡上先輩の悪い予感は当たってしまっていたようだ。

幸いなのは取り返しのつかないレベルまでは達していないようだが、もはや時間の問題だろう。


おそらく彼ら彼女らはここで救わなくてはこの先の未来が無い。

先輩たちに目を向けると、怒りと悲しみが混じった表情で、しかし何かを決意したようにも見える。

おそらく、僕と同じ考えなのだろう。

とりわけ彼女たちは本当にそうなりかけたのだ。

その想いはこの場にいる誰よりも強いのかもしれない。


全員が睡眠ポーションに手を掛けて彼らが接近するのを待つ。

投げつけたら届く距離までひきつけたところで、草陰から飛び出して睡眠ポーションを投げつける!


「っ!!!あいつらは!?い、いや、敵襲!!!」

その言葉を合図に30人近い全員が剣を抜くなり、杖を取り出すなり、戦闘準備をする。

そして彼らに届く寸前で剣や魔法でポーションの瓶を叩き割られる。

だがそれでいい。

すでに愛川さんは魔法を発動しており、今頃気化した睡眠ポーションが彼らを襲っているはずだ。


「な、なんだ!?急に眠気が・・・」

「わ、私も・・・」

「立ってられない・・・」


そんな言葉を残しながら次々に眠っていく、かつての同じ学校の生徒たち。

そして3分ほどすると全員が眠りこけていた。


有栖川先輩が言う

「本当に成功するのかドキドキしていましたが、あっけなく成功しましたね」


幡上先輩は

「ええ。とりあえずの第一目標は達したわ。皆、手早く隷属化解除の魔道具を使いましょう」


その言葉で全員が頷き行動する。

5分ほどで全員の解除が完了する。

ジム〇ーは元々は4人乗りだ。

しかし今ここに居るのは30人にも及ぶ。

この人数は流石に無理がある。


しかしこの森は思っていたほど木々の密度が高いわけじゃ無い。

ならばラン〇ルでも行けるはずだ。


「先輩。この人数を運ぶのは無理があります。手早くラン〇ルを購入してくるので少し待っててください」

先輩が頷くとすぐにショッピングセンターに入り、手早くラン〇ルを購入し戻る。

僕が購入しているラン〇ルは全て7人乗りだ。

僕らを含めて40人ほど。

ぎゅうぎゅう詰めになってしまうが、1台10人ほどで運ぶしかない。


手早く車に乗せてゆっくりと移動しながらではあるが、森を出る。

そして森を出てすぐに停車し、外に集団を寝かせて目を覚ますのを待つ。

といってもここまでの作業で既に1時間半ほど経過している。

あと30分くらいすれば順番に目を覚ますだろう。



今回はうまくいったし、この作戦がバレるまでは多分うまくいくだろう。

しかしずっとこのやり方は通用しないはずだ。

何かもっと別の方法も考えなくては・・・

そう思いながら彼らが目を覚ますのを待った。

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