2-2-α 女子会
(注意:この物語は完全にと言っていいほど番外編であり、単に作者が書きたいと思っただけです。またタイトルの言葉ですが、もしかしたらNo.2やNo.3が出るかもしれません・・・)
SIDE:幡上 愛理
蓮司君に保護されてから大分経った。
いや・・・最近の私たちを取り巻く環境が目まぐるしく変化しているため、時間の経過が長く大分と思ってしまっただけなのかもしれないが・・
最初は普通の男の子だと思った。
スキルなどなければどこにでもいる男子生徒。
おそらくだが異世界召喚なんてされないで、日本で暮らし続けていたら、私は彼に見向きもしなかったはずだ。
ただですら普通過ぎるのだ。そのうえで学年も違う。
ならばそれも致し方なしだろう。
でも私は彼に好感を持ってしまった。
それは単に私たちを助けてくれたからということだけじゃない。
自慢というわけでは無いが、私は胸が大きい方だった。
顔もそんなに悪いわけじゃ無いし、太っているわけでもない。
そうなると「綺麗な女子を彼女にする、という女子を一種のステータス」と思う男子からの告白沙汰は後を絶たなかった。
何が言いたいかというと、性的な目で見てくる男子が非常に多かった。
男子は気づいてないのかもしれないが、女子は視線には敏感だ。
見られている場所がバレていないと思っている人もいるようだが、視線に敏感な多くの女子は大体気づいている。
私も例に漏れず、主に自分の胸に注がれる男子の視線に気づいていた。
しかし彼はそういう目で私を見てこなかった。
いや、完全に見なかったわけでは無い。
そういう視線があまりに少なすぎる。
私たちの置かれていた状況は最悪と言ってもいいほどだった。
普通なら見捨てられて当たり前の状況だった。
なのに見捨てないとすれば、相当のお人好しか、私たちをそういう目で見てくる者だけだろう。
彼は前者のようだが。
そしてそのことは有栖川さんと愛川さんも分かっているようだった。
同時に私同様、彼女たちも彼に対して好感を持っていることも。
でも、そんな場合じゃないという状況なのか、理由はよくわからないが彼女たちはあまりそれを表に出そうとはしない。
しかし先日事故が起きてしまった。
彼は日本に居たころの物をスキルを使って購入できる。
それは私たち・・・いや、恐らく召喚された者たちがこの世界に来てからというもの、全員欲したであろうものばかりだった。
自分だけがその旨みを独占するのではなく、自分の考えに賛同してくれるならば保護して使う権利も与えると言ってきた。
しかもわざわざ家まで所有してだ。
元々は購入を考えてたようだが、貴族に恩を売る機会があったらしく、そのお礼にもらったようだが。
どちらにしても普通では考えられないほどに優しい。
この世界にきて自分たちに力が無いと判断され、追放され、そして絶望していた私たちにとってみれば希望の光・・・
いや古すぎるほどの表現をすれば「白馬に乗った王子様」のような気分だった。
彼に全てを明け渡せるほど、私も今現在勇気があるわけでは無い。
しかし彼ならば今まで他の男には見せたことのない私を見せてもいいかもしれないと思ってしまった。
そしてその事故で私は全裸を見られた。
恥ずかしい気持ちはあったが、日本に居たころに男子たちに見られて思っていた、何が何でも嫌というほどではない。
それは彼女たちの方も同じなのでは無いか?と思ってしまったのだ。
それを確かめるために、2人に問いかける。
「有栖川さん、愛川さん。2人は蓮司君のことをどう思う?」
「どうって・・・やさしい子だなと思います」
「私も、ありがたい気持ちでいっぱいでいい人だなって思います」
好意を抱いているのは間違いないが、そんな自分の気持ちを打ち消すかのようにごまかしているのも分かる。
ならば私がたたき起こすまでだ。
恐らくだが、私たちにそういう目線を向けてこないというのは、単に彼が性格的に優れているというだけの話では無いはずだ。
いたはずなのだ。
彼の近くに、美人といってもいいであろう少女が。
だとすれば今の私たちからすれば恋のライバルということに他ならない。
というわけで挑発をしてみる。
「そう・・・そういう煮え切らない態度をとるってことは、私が一歩か二歩くらいあなた達よりもリードしてると思ってもいいのかしらね・・・・・?」
「「!?」」
そういうとやはり驚いているようだ。
「その・・・先輩は蓮司さんのことが好きなんですか・・・?」
興味があるように聞いてくるようにも思えるし、答えを聞くのを恐れているようにも見える。
でも彼がこの世界で勇気の一歩を踏み出したように、私たちもその一歩を踏み出さなくてはいけない。
だから私は正直に答えた。
「好きよ。いえ・・愛しているというべきなんでしょうね」
「「!?」」
「何かきっかけとかあるんですか?」
と有栖川さんが聞いてくる
「自慢じゃないけど私は胸が大きいからね。男子から卑猥な目線で見られることなんて沢山あったわ。でも彼はそういう目線で見てこようとしないのよ。一緒に居て幸せになれる。隣に居てほしいと思う存在。まさか異世界に来て初めて感じるとは思っていなかったけど」
「確信をもったのは、こないだ彼が薬師さんに会いに行った日よ。あの日私たちは冒険者活動から帰ってきて3人でお風呂に入ったでしょう?そのあと私は一足先に上がったわけだけど、私が裸の状態で脱衣所でバッタリ会ってしまったのよ」
「「!?」」
「その時に私は確信した。恥ずかしい気持ちはあるけど、不思議と不快感はないんだってね」
「先輩も好きなんですね・・・・・・」
愛川さんが絶望したように言う。
有栖川さんは無言だが似たようなものだろう。
愛川さんに問いかける。
「その様子なら彼のことを好きみたいね。それで?あなたはあきらめるの?」
「・・・!だって!既に先輩が彼のことを好きって言ったんじゃないですか!?これで今、私が好きって言ったら後出しの卑怯者になっちゃうじゃないですか!?」
珍しい。
普段はオドオドしててあまり意見を言わないのに、はっきり言った。
それだけ彼への想いが強いのだろう。
ならばしっかり言わねば対等とは言えない。
「何を言ってるのかしら?ここは日本じゃないし地球でもないわ。聞けば貴族なんかは一夫多妻になってるのも珍しくないらしいじゃない?なら男の子にとってのハーレムもありだと私は思ってる」
「「!?」」
「それにね、これは私の考えだけど、そうでもしなければ私も勝てなさそうだからね。おそらくだけど、彼の近くには、彼自身が意識したことがないだけで女の子がいたはずよ。それも美少女と言っても差支えのないような子がね。
その子には多分勝てないはずよ。
だとすれば私が彼と共にあり続けるには、私の日本における価値観を壊して、一夫多妻を容認するしかないのよ」
「「・・・・」」
「私が他の奥さんがいることを認めれば一緒に居られる可能性は高くなる。
なら私は、今の私にとって正しいと思うことをするだけよ・・・」
「あなた達はどうするの?」
ため息をつきながら有栖川さんが答える。
「悩み続けたのが馬鹿らしくなる答えね。でも確かにそれしかなさそうね」
愛川さんは何も言わないが答えが変わったようだ。
戦う意思と希望のようなものを持っているように見える。
「二人とも、覚悟は決まったようね。それなら私たちは時にライバルであり、時に同じ立場を目指す同志ということになるわ。改めてよろしくね?」
二人は顔を見合わせて返事をしてくる。
「「よろしくお願いします!!!」」
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