第2部 侵攻と保護
2-2-1
あれから僕は召喚勇者たちの対応について考えていた。
召喚勇者たちはこれから加害者になろうとしている。
しかし、見方を変えれば彼らもれっきとした被害者だ。
僕と同じように、訳も分からず異世界に連れてこられて戦えと理不尽な命令をくだされ、隷属化の首輪で逆らうこともできずに人殺しをさせられる。
他の国がどうだかは詳しくはしらないが、日本は殺人に対する忌避感がとても強い。
仮に正当防衛であったとしても心無い人間が後ろ指をさしてくることがあるくらいには。
そうなると、いくら公国や自分自身の身を守るためとは言えど、ある意味被害者たる彼らを殺すのは忍びない。
だとすると殺さずに無力化する手段が必要になる。
とはいえ僕に戦闘能力自体は皆無と言っていいだろう。
となるとその手段の確保・・・というか開発が必要になる。
そこでふと思った。
エリクサーは上級ポーションと混ぜることによって出来上がる物だ。
ならば仮に初級ポーションに眠りの効果のある薬草を混ぜたらどうなるのだろうか。
そう思った僕は早速ヒーレニカさんのところ行った。
彼女も開戦に備えた避難でこの領都へ移動している。
僕との取引で得たかなりの資金を使って直ぐにお店を開いたようだ。
きけば最近は監視されてる気がするとのことだ。
しかし危害を加えようというものではなく、むしろ逆に感じられているとのことだ。
公爵様がエリクサーを必要としていた為渡した際に彼女の名前を出したため、護衛が付くようになったと思うことを話したら、ジト目になりながら納得してくれた。
先に依頼していた中級ポーション1000本と上級ポーション200本、残りのエリクサー9本の受け取りを行う。
そして本題について聞いてみる。
「眠り薬は作れるか」と・・・。
答えは「わからない」だそうだ。
そもそも眠り薬のポーションなんて存在したことがないとのことだ。
僕は初級ポーションを彼女に渡し、安眠効果のある薬草、クワンソウを渡して、エリクサーと同じ要領で混ぜてみてほしいと頼んでみた。
すると今までにないポーションが出来上がっていた。
【睡眠ポーション】
飲むと1日中眠ってしまう。
熱がある状態ならば液体を維持できる。しかし常温では気化がとても早く、ポーションの瓶が割れたりなどすると一瞬で気化してしまう。
気化したものは蒸気として少しの間、そこに残りその空気を吸ったものは2時間ほどではあるがすぐに眠ってしまう。
思った通りのかたちでできた。
だとすると初級ポーションに、それぞれ狙いとする効能のある薬草を使うことによって特殊なポーションができるはずだ。
それこそ使いたくはないけど毒ポーションとか。
というか毒のポーションってなんだろう・・・
なんにせよ色々薬草・・・というか毒草で調べてみた。
その結果ハシリドコという植物が毒草の一つであり摂取した際の主な症状に脱力感があるとのことでこちらも試してみた。
【脱力ポーション】
飲むと1日中力が入らなくなってしまう。
熱がある状態ならば液体を維持できる。しかし常温では気化がとても早く、ポーションの瓶が割れたりなどすると一瞬で気化してしまう。
気化したものは蒸気として少しの間、そこに残りその空気を吸ったものは2時間ほどであるが、脱力してしまい動けなくなってしまう。
こちらも思った通りだ。
初級ポーションを2000本購入し、彼女に渡し、毒草を渡す。1本大銀貨1枚で睡眠ポーションと脱力ポーションを1000本ずつ作成してもらうように依頼する。
もちろん目的として戦争を仕掛けてくるであろう王国戦力を一時的に無力化するための手段として使うつもりであることも伝える。
決して殺すためではなく、生かして捕らえるためだとも・・・。
その答えを聞いて納得してくれたようだ。
これで召喚勇者に対する方法はある程度大丈夫だろう。
この戦争におけるネックは言うまでもなく召喚された勇者たちだ。
その中でも隷属化の首輪で強制的に従わされている者たちだ。
彼らを救助し助けることができれば、こちら側に引き込むことができるかもしれない。
残る問題は救助した彼らをどこで匿うかだ。
現実的には領都から少し離れたところに寝泊まりできる場所を作るべきだろう。
領都や首都は万が一裏切りが発生したときが怖い。
それを考えると、領都から近いが、だが万一反乱などを起こされても対処の時間がある地域でないといけない。
そうして家に帰ると、先輩たちも帰ってきているようだ。
靴が置いてある。
今日は草原や森の入り口に行ってスライムやゴブリンを討伐してくるという話だったはずだ。
まぁなんにしても無理をしていないようで安心だ。
今日はもう外に出る用事も無いはずだ。
ならゆっくりと熱いお湯にでも浸かってお風呂に入るとしよう。
お湯を溜めるために脱衣所に入るが・・・
そこで幡上先輩と出くわしてしまった・・・ただし全裸の・・・
ちょうどお風呂から上がったばかりなのだろう。
ほんのりと顔が赤く汗が滴っている。
手に取ったばかりのタオルを持った状態で、ばったり出会った僕と共に固まってしまった。
たっぷり10秒くらいしてから、大きく息を吸い込み
「す・・・んんーーー!」
すいませんでしたと謝ろうとしたが、口をふさがれてしまう。
密着状態なので僕も少し濡れる。だがそれ以上に弾力のあるものが押し付けられる。
ま、まずい。このままじゃ邪な感情が・・
「事故なのでしょうし、鍵を掛けなかった私たちも悪いわ。それに大声を出すと残りの二人にバレるわよ?」
目をそらしながら必死に頷く。
「それに・・・蓮司・・・になら、見られてもいいと思ってるから」
「それってどういう・・・」
目をそらしながら静かに問う。
「あら、女の子にそれを言わせるつもりなのかしら?」
「・・・・・・」
「とにかく早めに、静かに出て行った方がいいわ。そのうちあの二人も上がってくるでしょうしね」
僕は黙って頷き、小声で「すいませんでした」と謝って出ていく。
しかし、そういうことなのか?でもなぜ?
疑問を浮かべながら扉を静かに閉めた。
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