2-1-α 蓮司達の地球への渇望

あれから領都に帰り僕はすぐに家の改装に取り掛かった。

まずは風呂場やトイレの部屋を全て撤去した。

業者さんからは「どうやって生活するんだ?」って聞かれたけど、黙秘させてもらった。


ホームセンターで魔法の・・・ともいうべき、トイレとお風呂、そして洗濯機を購入し設置する。

当然ついでに薬屋にも寄って自分好みのシャンプーなども購入する。

ちなみに彼女たちも風呂に入ることを想定し、女性もの向けのシャンプー類も購入する。


これで洗濯の手間も省けるし、毎日・・・ってほどではないかもしれないけど、冒険者活動をしてないときは基本的に毎日身綺麗にできるだろう。

それに念願の風呂に入れると思うと気分が上がる。


これから行動する昼間に入るのもどうかと思うので入りはしなかったが。


なお先日のエリクサーの一件の功績が認められたのか、ショッピングセンターのテナント解放とスキル上限解放が認められた。

解放されたテナントは服屋・・・・地味だが正直助かる。

この世界の物は作りが粗いものが多い。

肌着に着るものまでゴワゴワしていて正直着心地が悪いのだ。

肌着や下着なら見えにくいだろうし、着ても問題ないだろう。


そしてスキル上限解放は、自分が認めた者のみが、自分が認めたテナント1店舗に入ることができるという物だ。

なお入れるのはどうやら異世界人・・・所謂、勇者召喚された者だけみたいで、例えばこの世界の住人である公爵様は入れないようだ。


これに関しても内心助かる気持ちだ。

自分だけが良いものを着るのは心苦しい。

しかし彼女らの物も買ってあげようにも、女性からすれば見ず知らずの男性に自分の着ている下着とかを知られたくは無いだろう。

共同生活を送るうえで洗濯物を見るとか、そういう事故は起こりうるかもしれないが、少なくとも買うところまでは知られたくないはずだ。


それに女性で買えるものが出れば、仮にこの世界の女性で知り合いになった人に買ってあげたいと思っても、先輩たちに相談すればなんとかなりそうな気がする。


何はともあれ、今日は先輩たちに風呂とかテナントとか見てもらおう。

もちろん説明は後回しにしてサプライズとしてだ・・・


宿屋に泊まっている先輩たちに会いに行き、今日からもらった一軒家に一緒に住んでほしいと説明する。

年頃の男女が一つ屋根の下で泊まるのはあまりよくないかもしれないが、利益の共有配分だ。

致し方ないだろう。


「そう・・・蓮司君は。私たちと一緒に住んでくれるのね?ならそういうことだと見ても良さそうね」

と、幡上先輩が・・


「蓮司君も意外に出るときは出るのね。引っ込み思案な性格なのかと思ってたのだけれど」

と有栖川先輩。


「わわわわ・・・どうしよ、ぜんぜん準備ができてないよ」

と愛川さん。


「???そういうこととは?とりあえずこれで人目を気にせず王国との戦いのこととか話せると思ったのですが」


「「「・・・・・・」」」


「・・・・天然?鈍感?プレイボーイなのかしら」

幡上先輩が何か言ってたが、小さな声で聞こえない。

まあ女の子なわけだし知られたくないこともあるだろうから必要のない詮索はやめておこう。


「あと先輩たちに見てほしいものがあるんです」

とワクワクを抑えきれない声で話。


「見てほしいもの?何かしら???」

と疑問の幡上先輩。他の2人も同じような顔をしている。


どんな反応をするか楽しみだな~

というわけでまずはトイレに連れて行った。


「これって・・・もしかして・・・」

「はい。地球に居たころのトイレです。不思議な力が働いてるらしく、水の給水や流した物の処理は必要ないとのことです。ちなみに温水洗浄機能もついてます」


「「「・・・・・・」」」


「嫌・・・でしたか?」

何時までも反応が無いため不安になって聞いてしまう。


「嫌なわけないでしょ!?この世界のトイレは何!?汚いし、臭いし、見た目も悪いし、冬は寒そうだし。今までの私たちの苦労は一体なんだったのよ・・・」

最後の方が声が萎んでいく。


「す、すいません。つい最近にスキルが解放されたうえ、宿の構造を勝手に変えるわけにもいかなかったので、家を所有してからじゃないとと思って」


「ごめんなさい。つい、取り乱したわ・・・それだけ衝撃だっただけよ」

「そ、それなら安心しました・・・。もう一つ見せたいものがあるんですけど」

と言いながら案内する。


着いたのは脱衣場と風呂場だ。

「脱衣場の洗濯機は乾燥機能も付いてます。こちらも不思議な力で汚水とかの処理は必要なしです。それで奥が・・・・・風呂場になってます。こちらも処理は必要ありません」


「「「・・・・・・・」」」


さっきと同じ無言だ。

多分大丈夫だろうが不安になって聞く。

「あ、あの~」


「「「・・・蓮司君(さん)のやることだものね」」」


ついに同郷の人間にまで言われてしまった・・・

解せぬ


「これらは私たちが使っても?」

と聞いてくるが目がマジだ・・・リリアーネットさんといい勝負だろう


「も、もちろんです。そのために薬屋で女性物のシャンプーとかも買ってありますから、ほら・・・」

そういって買ったものを指差す。


「わかったわ。驚きの連続だけど、これは我慢できるものじゃないからね。

この世界って体拭くだけが基本でなかなかシャワーすら浴びれないし、いろいろ限界だったのよね」

と有栖川さん。


見た目育ちがよさそうな感じだし、どこかの社長令嬢のようにも見える。


「あともう一つ相談したいんですけど」

「・・・何かしら?」


「僕のスキルのショッピングセンターで1テナントだけ、先輩たちも使えるようにできるみたいですけど、どうしましょうか?」

「うーん・・・こういっては利用してるみたいで申し訳ないけど、必要なものは蓮司君を通して買えるわけだし、別に必要ないかなって思ってしまうのよね」

と幡上先輩。他の二人も頷いている。


「でも、僕に言いづらいものとかもありませんか?」

「例えば?」


「その・・・服屋が解放されたので、・・・・下着・・・・とか」

「なんでそれ先に言わないの!?それならその服屋に入れるようにしてくれると嬉しいわ」

大きな声で言われるが怒っているわけでは無く・・・単に早く買いたいだけのようだ・・


「蓮司君、女の子っていうのは男の子よりも肌が敏感だったりすることが多いのよ?だから日本にいたころの下着が買えるっていうのは大問題なのよ?」

と有栖川先輩が説明してくれる。


女の子って大変なんだな・・・男だからよくわかんないや・・


それなら日焼け止めクリームとかも必要なのかな。あと化粧水とかも・・・

訊いてみたら3人とも目がマジになりながら買ってほしいと言ってきた。

こ、今度・・・いや今日中に購入しよう。

それからこの世界で女性におしゃれに関することを話すのは自重しよう・・・

下手をすれば殺されるかもしれない・・・

そう思う蓮司だったのだ。


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