2-1-10

公爵様との面会当日。

僕は指定された場所へと行ってみた。


・・・・・大きい。

確かに一軒家ではあるけれど、周りと比べるとかなり大きい。


「おお。レンジ殿、久しぶりであるな」

「お久しぶりです、公爵様。この度は僕に家を買っていただきありがとうございます」


「当然のことよ。我が息子の腕を治してもらったのだ。本当なら婿に迎え入れるくらいは必要なのだ。だが・・・君は今現在そういう政治がらみは嫌だろう?」

「はい。僕は貴族では無いので、政治的な細かいことは苦手なんです」


「だからこういう形をとらせて―――「あなた、いい加減私たちも紹介してほしいのだけれど」

「お、おお。すまない。つい夢中になってしまった。レンジ殿。

私の妻であるリリアーネットだ」

「お初目にお目にかかります。リリアーネット・フォン・アルコーンと申します。この度は私たちの息子を救っていただき感謝しております。また普段からあなたの商品には助けられております」


ははは・・・後者の方が大きな目的なんじゃないかな・・?


「そしてこちらが・・・・」

「私はアレックスと申します。アルコーン家の長男です。此度は霊薬の譲渡、感謝してもしきれません。私もまだ学生の身ですが、いろいろと口添えできることもありますので何かお困りでしたら遠慮なく申してください」


「あと、娘たち3人、順番にイザベラ、アリシア、レミリアです。

イザベラは長女で公国首都の学校に通っています。

アリシアとレミリアは双子でして、まだ学校には通っていません。

この国では9月始業が一般的でして、今年の9月から学校に通う予定になっています」

軽く会釈をしてくれる。


「とりあえず、今レンジ殿とレンジ殿が保護をしている者たちが住める場所ならよいかと思ってな。それにレンジ殿はこれから先いろいろな貴族とのかかわりも増えてきてしまうだろう。そうなると首都に住むのが恐らく好ましいはずだ。この家は辺境伯領での拠点の一つにするといい。もちろんだが、首都の家の方も今選定中である。

今しばらく待ってほしい」


「わ、わかりました。ありがとうございます・・・」

管理しきれるかな・・・・


「今日のところは単に家を空け渡すのと、ちょっとした挨拶で来ただけだ。

勿論、後日正式に招待しようと思う。」


だが僕は心の中で決めていたことを話そうと思った。

「あの・・・・」

「どうかしたかね?」


「僕の事情についてはご家族の方はご存じなのですか?」

「いや・・・知らない。簡単に教えてもいい話では無いと思うしな」


「でしたら教えてあげてください。それから軍の上層部や一部の有力貴族にも」

「・・・・なぜだね?それは君にとっての厄介ごとが増えるだけだと思うぞ」


「これからこの国はと戦うことになるのです。そうなると必然的に彼らがどこから来たのかなども知られることになると思います。そうなれば僕のことも隠しておくのは厳しくなると思うんです」

「・・・・・・」


「それに変に隠そうとするよりは、細かい情報を公表することだけを避けて必要な個所に通達を行うことで、ある程度の力を得ながら、必要時には隠し通すための手段がいろいろと取れるように思うんです」

「確かに・・・・そうだな」


方針が決まった公爵様は僕の事情について家族に話し始めた。

始めて公爵様に話した時やアビー達に話した時のように、この人たちは怒ってくれた。

あまりにも身勝手な理由で呼び出し、身勝手な理由で追放するなど・・と。


「わかった。そちらの手筈も整えておこう。」

「いえ・・・どうせなら一度大目立ちしてはいかがですか?」


「というと?」

「その前に質問ですが、ここから首都までは大体どれくらいかかりますか?」


「う~む。天候などにもよるがおおよそ2~3日といったところだろうか・・・それがどうかしたのかね?」

「いえ、異世界の乗り物なら朝に出ればギリギリ夜にはつけるのではないかな・・と」


そして提案する。

「なので首都にも私がお送りしますので、そちらで移動してはいかがかな・・と」

「なるほど・・・それは興味深いな。君の世界の物がどれほどの物なのか見てみたいしな。それに見たこともないものであれば普通なら突拍子もないことも受け入れてもらえるであろう」


その後首都まで送ることになったため、公爵様の馬車は空の状態で帰ることになったのだが、護衛の兵士たちが当然反発した。

何がなんでもついていく・・・と。

公爵様が説得しようとしていたが、埒が明きそうにないので、挑発じみたことを言うことにした。


「えーと・・・ついてこられるならついてくればいいと思います。あくまでもついてこられるのであればですが」

それで一応は納得したようだ。


そして僕はラン〇ルを出し、公爵様の道案内のもと走り始める。

当たり前だが、そもそも馬車とは速度が違いすぎるし、安定して走れる速度としても馬単体より速い。

そのため護衛の兵士たちとは直ぐに離れてしまい、見えなくなるのだった。


当然公爵一家は驚いており、乗り心地などは初めてアビー達が乗った時とさほど変わらないものとなった。

「レンジ殿、これは貴殿のみが扱うことができるのかね?」

「いえ、僕が使ってもいいと認めた人も扱うことができるようです」


「・・・相談なのだが」

「公爵様の分も仕入れますよ。首都に着いたらでいいですか?多分ですけど公爵様と共有しているアイテムボックスにしまっておくことができると思うので。権限は申し訳ないですが、公爵様と奥様、ご子息の方々に限定させていただきますね」


「すまない。色々助かる・・・・・・・」

ふと鏡で後ろを見てみるとリリアーネット様の目がマジになっている。

多分公爵様も気配を感じ取ったのだろうな・・・


今ここで化粧品の話をすればとんでもないことになる気配がする。

首都に着く直前まで黙っておくことにした。


首都に着いてからは当然騒ぎになり取り囲まれたりしたが、公爵様が乗っていたということだけあってすぐに解放された。

公爵邸に着き、中に入れてもらってすぐにショッピングセンターでラン〇ルをもう2台購入。

それを公爵様とのアイテムボックスに入れる。

今日は公爵邸に泊まることになった。


翌朝、辺境伯領都に戻るときは一家全員で見送りに来てくれた。

その際に洗剤系とお菓子、そして化粧品についての説明をしてお土産を渡した。

当然、女性陣の目が殺気立っており、そして公爵様は感謝を述べながらも、かなり青い顔をしていた。

なんか申し訳ないです・・・そして車の中で言わなくてよかった・・


そして僕は辺境伯領都に戻ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る