2-1-8

「そういえば今日はお土産があるんです」

「土産?」


「日本においてはメジャーなお菓子、チョコレートと言います。

見た目は焦げ茶に近い色でおいしくなさそうに見えるかもしれませんが、

砂糖を多く使っているのでお茶の時間などにはいいかもしれません」


僕は二人に1箱ずつチョコレートを渡しながら、もうひと箱を取り出し封を開ける。

「中身は同じものです。これは味見と考えてください」


「うむ・・・確かにそういう色をしているな。これは少し勇気がいりそうだ」

「たしかに・・・・」


「とはいえレンジ君が我々を騙そうとはしないだろう。」

と言いながらチョコレートを口に含む公爵様。


「・・・・・・・・・・」

「ど・・・・・・・どうですか?」


「なんだねこれは!?今まで食べたことがないほどに美味しいぞ!確かにこれならお茶に合いそうだ!

レンジ君、これを販売する気はないのかね!?」


「えーと・・今は貴族の方向けのお土産程度にしか考えてなくて・・」

「ならばこれも売ってくれ!これは貴族の間で大流行するぞ!」


「甘いものは別腹・・・・・」

「そうだ。特に女性貴族はこぞって求めることになるだろう」


「今は大した量が無いのでまた今度で・・・」

「できる限り早急に頼む!あと、今の手持ちはあといくつある!?」


「あと7箱です・・・・」

「なら辺境伯に3箱、私に4箱売ってくれ!値段は1箱小金貨1枚でどうだ!?」


「それでいいです・・・」

原価3000円相当が10万円に化ける。これが異世界クオリティなのか・・・?


「しかしレンジ殿はびっくり箱であるな。そろそろレンジ殿の成すことだからと受け入れるべきなのだろうか・・・」

とここで今まで沈黙を守っていた辺境伯様が口を開く。


ヒーレニカさんと同じことを言ってるぞ・・・この人・・


「それにしても次から次へと考えられないものを出してくるな、君は。

これなら、いずれは私の息子も救ってくれるかもしれないな・・・」

と公爵様が言い放つ


「・・・・・・・ご子息様???」

「うむ。我が息子は剣とまつりごとの才能があったのだが、お忍びで冒険者をやりおってな。結果魔物に右腕を奪われて、なんとか命は助かったのだ。

しかし片手を失った状態では不利になる。

加えて我が家はどうにも女系の家らしくてな。娘は3人生まれたが、息子は1人しか生まれなかったのだ。

このままでは家督は長女に譲り、婿をもらわねばならぬ。

できることならば長男である息子に家督を譲りたかったのだが・・・」


「ちょっと確認したいことがあるので失礼しても・・・?」

「???・・・構わんぞ?」


許可をもらったところでヒーレニカさんとの共有アイテムボックスを開いてみる。

先にエリクサーを1本作れるか試してほしいと頼んでいた。

確認すると見慣れないポーションが入っていた。

金色のポーションだ。鑑定をかけてみると、


【エリクサー】

とても希少な薬草をつかった霊薬。

あらゆる傷を瞬時に癒すだけでなく、部位欠損も修復可能。

寿命が延びることは無い。


できちゃってたんだね・・・

流石はヒーレニカさんだ。

僕は急いで手紙を書き最後に血判を押しておく。


「あの・・・公爵様、大変申し上げにくいのですが・・・」

「何かね?」


「部位欠損を治すことのできる霊薬、エリクサーができたみたいです・・・」

そう言いながら金色のポーションをテーブルに置く。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


お願いですから何か言ってください。

居心地が悪すぎます。


「ま、まあレンジ殿の成すことですから・・・」

「そ、そうであるな。レンジ君のやることだからな・・・」


公爵様までその理由で納得するようになってしまった。


「ちなみにレンジ君、このエリクサーの入手ルートは?」


ここは正直に答えたほうがいいだろう。

事は僕と公爵様だけの話では済まない。

必然的にヒーレニカさんを巻き込むことになる。

僕は彼女との関係性を話すことにした。


「僕が今拠点を置いている街。すなわち避難を提案されていたあの街ですが、ヒーレニカさんという薬師さんがいます。薬草を入手できるようになった僕は商人ギルドの伝手で彼女を紹介してもらいました。そして個人的に保険としてポーションを持つようになった次第です。

ちなみにですが、スタンピードの際に供与したポーションは全て僕が素材を渡し、彼女に作ってもらったものになります。

今も素材を渡し、現在は中級ポーション1000本と上級ポーション200本、エリクサーを10本製作依頼してます。

この1本は作れるかどうかの検証として先に作ってもらった物になります」


「・・・・・・・・・ファスペルよ」

「ハッ」


「今すぐ隠密に長けたものの中で護衛部隊を編成し、その薬師の近辺を護衛せよ。

レンジ君ならば自力でどうにかできそうだが、その薬師は何が何でも失うわけにはいかぬ。失えばこの国にとって大損失だ」


「承知いたしました」

「頼む。過去にエリクサーを作ったというのは文献上での話でしかない。失うわけには行かない。とりわけ戦争を仕掛けてくる王国には、特に・・・な。」


「それからレンジ君、いや・・・私もレンジ殿と呼ばせてもらおう。

何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ。公爵家として全力での手助けをさせてもらう。もちろん隷属化解除の方法も早急に手に入れる。だが、それ以外に困ったことがあったら言ってほしい。あと、やはり君の家や、君が保護した者たちを受け入れ先の建物は我が家で用意しよう。これほどの物をもらって何もしないのでは公爵家の名が廃る」


「あの・・・でしたら、その恩賞はご子息様の腕が治ってからということで・・」

「わかった。治ったら直ぐに用意させる。息子の腕を治した恩人ならば、我が家のものは文句を言うものはいないはずだ。むしろそれで文句を言ってくるようならば廃嫡にし追放するつもりだ」


その後は、ご子息様の腕が治ってからということになった。

公爵様はすぐにお土産や購入物をもって領地に帰っていった。

ちなみに公爵様との間にも、時間経過なしのアイテムボックスのパスが繋がったため結んである。

加えてファスペル辺境伯様とのアイテムボックスも、時間経過なしにしてある。




これで二人に対してケーキとかもお土産できるな・・・なんてことを考えていた。

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